鳥獣害対策~ヒグマ編~

ヒグマは北海道のみに生息する日本最大の陸生動物であり、道民には身近な存在です。しかし近年はヒグマによる農作物被害が増大し、良き隣人とは呼べない状況です。そのため、生態を理解し適切な対策を図ることで、人との良好な共存関係を再構築する必要があります。
そこで今回はヒグマの生態や被害、対策方法を紹介します。

生態

ヒグマは4月下旬頃に冬眠から目覚めて夏まで繁殖行動し、秋に食いだめして12月頃に冬眠します。食性は植物を中心とした雑食で、春~夏まではエゾニュウやフキなどの野草を、夏~秋には野草に加えてアリ・ザリガニなどを、秋~冬にはヤマブドウ・ドングリなどの果実を中心に食べます。
特筆すべき特徴として「学習能力の高さ」が上げられます。例えば、基本的に人を避けて行動しますが、人と無害な接触を重ねることで人慣れします。つまり生ゴミや人、農作物の味を学習してしまった個体が、問題を起こしてしまいます。

写真 サケも重要な秋のエサ

写真1_ サケも重要な秋のエサ

被害

ヒグマによる農業被害額は地域別では、道東・宗谷地区の割合が多くなっています(図1)。作物別では、飼料用とうもろこしの割合が5割以上を占め(図2)、酪農地帯での被害が深刻です。理由は8~9月頃は食べられるものが減少し、その時期に成熟する農作物が狙われるためです。

ヒグマによる農業被害金額249億円のうち、道東・宗谷地区の被害金額が165億円と約60%を占めている

図1_R2年度ヒグマによる農業被害額

ヒグマによる農作物別の被害金額のうち、飼料用とうもろこしの割合が55%と半数以上を占めている

図2_R2年度作物別ヒグマ被害割合

対策

一番有効な手段は、ヒグマを近寄らせないための対策です。

被害状況の把握

基本は被害が発生する前に対策を行い、もし被害にあった場合はその状況(地形や侵入経路など)を把握しましょう。食害痕の多くは畑の枕地よりも姿が隠せる中心部に多いことから、ドローンを活用すると安全かつ簡単に把握できます(写真2)。

ドローンを活用することによって、安全にほ場の食害状況を把握できます

写真2_ドローンで食害状況を把握

刈り払い

ヒグマは臆病なので、自分の姿が丸見えにならないように、茂みが深い場所からほ場に侵入します。ほ場周辺の草木を刈り取って緩衝地帯を設けることで侵入しづらくなります。

電気柵の設置

学習能力の高さを利用し、電気柵で電気ショックを与えて怖い物と認識させ近寄らせなくする、直接的で効果的な方法です。しかし、漏電により通電がなかったり、設置場所が悪いと、くぐるまたは飛び越えて侵入可能であることも学習します。下草刈りや設置位置の調整など適切な維持管理が必要です(図3)。

電気柵の下草は、50cm以上伸びてしまうと漏電のリスクが高まります

図3_電気柵の維持管理

廃棄物の適切な処理

飼料用とうもろこしの収穫後に残った子実は、ヒグマを誘引します。収穫後にすき込むことで対策できるので、放置せず早めの処理を心がけましょう。

最後に

地域によってはヒグマを狩猟できるハンターも限られており、捕獲圧を高められない現状では自己防衛が基本となります。
ヒグマと人が安全・安心をもって共存するためにも、ヒグマへの理解を深め適切な対策をお願いします。

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