乳房炎にご注意を

乳房炎にご注意を

 

 

 

 夏も過ぎ涼しさを感じるこの時期は、暑熱ストレスを受けた牛たちが、免疫力の低下で疾病を発症しやすい時期となります。
 特に、敷料や糞など、牛を取り巻く環境に存在する「環境性乳房炎菌」が原因の乳房炎が増加します(図1)。
 今回は、環境性乳房炎に焦点を当て、その特徴や対策を紹介していきたいと思います。

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図1 臨床型乳房炎菌種別季節変動(株式会社デーリィ・ジャパン社出版「乳牛の疾病・予防・治療・看護方法」)

 

 

菌の特徴と治療

 

1 環境性連鎖球菌(OS)

 

 乳腺や糞中に存在。難治性の乳房炎を引き起こし、乳房内に侵入すると乳房は腫脹・硬結を示し、乳汁は凝塊を含む乳白色となります。
 ペニシリンなどの抗生剤の注射、乳房炎軟膏で治療、特にウベリスには5日以上かけて治療していきます。

2 コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)

 牛の皮膚・乳頭表面や乳房の毛に存在。症状は軽度で、通常の3日間の軟膏治療で治癒しやすく、ほとんどの抗生剤で治癒可能です。

3 大腸菌群

 乳房炎による死亡・廃用事故の一番の原因菌です。糞や土壌、敷料(クレブシエラは特にオガクズ)に存在。水様乳汁、発熱、食欲不振、目の充血が起き、全身に細菌由来の毒素が回るとショック症状や起立不能となります。
 細菌を減らすため、オキシトシンを使用し搾り切ることが先決ですが、異常症状を確認したらすぐに獣医師へ連絡しましょう。

4 真菌群

 真菌(カビ)によって乳房炎を発症します。乳房の著しい熱感、腫脹、硬結を示し、乳汁にブツを伴いますが、食欲低下があまり見られないのが特徴です。
 軟膏注入により症状は悪化してしまうため、イソジン入りの生理食塩水の乳房内注入、頻回搾乳で体内から真菌を出すなどして治療していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

環境性乳房炎の予防

 

 

 

 

 これらの菌類による乳房炎を発症しないためには、牛の飼育環境を清潔に保つことが重要です。

1 牛床清掃

 牛床は水気が残らないよう、こまめに除糞を行い、また繋ぎ牛舎では牛に合ったカウトレーナーの調整で、牛が前に行きすぎず糞が牛床に落ちにくくなり、牛床を清潔に保てます。

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2 搾乳工程

 前搾りの際に、乳汁に異常がないか確認し、搾乳前と後でディッピング剤をしっかり乳頭へ付け、乳頭の側面や乳頭口の徹底した清拭を心がけましょう。
 ミルカー装着時にはきちんと乳頭の水分をとり、ライナースリップで空気がミルカー内に入らないようにしましょう。

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 環境性乳房炎菌は、牛の飼育環境のあらゆる所に存在し、菌を完全に防ぐことは不可能です。
 しかし、日々の作業から、なるべく菌を繁殖させず、乳房への侵入を防ぐことは可能です。牛たちを健康に飼育し、経営への損害の芽を未然に摘んでいくことが大切です。

 

(治療方法は、NOSAI獣医師に伺いました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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