パスチャライザーの有効活用~衛生管理は大切~

パスチャライザーの有効活用~衛生管理は大切~

 衛生管理の重要性についてパスチャライザー活用の観点からお話しさせていただきます。 

 

パスチャライザーとは

 パスチャライザーは、子牛へ給与する初乳や移行乳を60℃、30分で加熱殺菌する装置です。
 主な目的は、母乳が伝搬経路のひとつとなるヨーネ病や牛白血病の蔓延予防、衛生的な初乳や移行乳の給与です。
 使用している農場からは、「子牛の下痢が減った」「毛づやが良くなった」など、その効果を実感する声が多く聞かれます。

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写真 パスチャライザー

パスチャライザーの課題

  1. 加熱殺菌、冷却に約90分の時間を要するため、朝(夕方)処理したミルクを保管し、夕方(翌朝)給与するという体系の農場が一般的です。保管中、残存菌の増殖が心配されます。
  2. 加熱殺菌という機器の特性上、衛生に対し安心感をもちます。しかし、効果は衛生管理に不備があると、十分活かされない可能性があります。

生乳と加熱乳の生菌数調査より

 パスチャライザー使用農場の協力のもと、加熱処理前の生乳と加熱処理後、哺乳前の加熱乳の生菌数調査を行いました。

【結果】(図1参照)

  1. 処理後、すぐに哺乳するA農場は、パスチャライザーにより菌数が減った加熱乳を給与することができていました。
  2. 処理後、8時間以上保管し哺乳するB農場とC農場の内、B農場では菌数の少ない加熱乳を給与していました。一方、C農場では、保管中に菌数が処理前の15倍に増加していました。

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図1 生菌数の変化


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【考察】

 B農場とC農場の違いのひとつは保管温度(Bは16℃、Cは23℃)でした。A農場のように処理後すぐの哺乳が推奨されますが、できない場合は、冷蔵庫や流水で冷やすなど極力低温保管することが必要です。
 B農場とC農場の違いは、保管温度のほかにもありました。
 まず、パスチャラザーの洗浄方法です。B農場では1日1回アルカリ洗浄するのに対し、C農場では水洗浄のみでした。
 次に、C農場ではこの日、ミルクが不足していたため、やむを得ず乳房炎乳を加えて使っていました。
 C農場では機器や生乳の衛生状態により、加熱殺菌能力が十分発揮されなかった可能性があります。
 B農場からは「乳房炎乳を使用した時は下痢が増える」との声もあり、生乳の衛生品質の大切さがわかりました。

 

パスチャライザー活用ポイント

以上のことからポイントを次の通りまとめました。

  • 加熱乳は速やかに哺乳する
  • 加熱乳を保管する場合は、極力低温を保つ
  • 衛生的な生乳を加熱処理する
  • パスチャライザーは使用毎に洗浄する

 

さいごに

 これらのポイントは、パスチャライザーを使用していない農場でも同じことがいえます。
 この機会に搾乳、バケットミルカー、哺乳瓶など一連の衛生管理を確認し、元気な子牛づくりの一助にして下さい。

 

パスチャライザー活用のポイントをまとめたリーフレット(当ホームページの別ページへ)。

 

 

 

 

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