分娩事故を減らすために~分娩予知通報システムの紹介~
北海道における乳用牛頭数は減少傾向にあり、乳量生産は従来に比べて伸び悩んでいます。 課題として、後継牛をどのように確保するかが重要であり、子牛の死産を減らすためには、分娩管理改善への取組みが必要です。
1 分娩事故による死産率
鶴居地区の死産頭数は、直近7ヵ月で325頭でした。これは分娩頭数の9%です。戸別では死産率が10%を超える農場は21戸あります。死産率5%以下が目標であることから、分娩事故が多発していると言えます(図1)。
2 分娩の兆候と進行を理解する
分娩事故を減らすには、分娩管理の見直しが必要です。
そこで、正常な分娩の兆候と分娩の進行についてまとめてみました(図2)。ここでは、ポイントのみを整理してお伝えします。
写真1 第一次破水を確認(石井三都夫氏提供)
管理者は母牛の体温低下を確認し、第一次破水を見つけることで、その後の対応を決めることができます。
しかし、管理する人が少ない、ほ場作業が多い等、母牛を常時観察するのは難しいことです。そんな時、分娩開始を伝えてくれる便利な装置があります。
3 分娩予知通報装置の利用
今回は「牛温恵(ぎゅうおんけい)」について紹介します。
この装置は、膣内に装着することで、分娩前特有の温度低下を検知し、携帯電話へ「段取り通報」を伝えます(写真2~4提供は大分県農林水産研究指導センター)。
写真2 赤い丸印が体温感知センサー
写真3 センサーを分娩予定1週間前に挿入
写真4 体温感知センサー装着完了
それから約24時間後に第一次破水が起きると「駆けつけ通報」が知らされます。管理者は、「段取り通報」が来るまで分娩を気にせず、他の作業に集中できます。また、「駆けつけ通報」が来れば、分娩牛舎に行き、異常が無いか確認し、その後の対応を決めることができます
分娩管理にお悩みの方は農場に合った装置等の導入を、是非、検討されてはいかがでしょうか。