寒冷期における哺育牛の管理
寒冷期の哺育管理において、「防寒対策」と「換気」が重要ということは既にご存知のことと思います。
改めて「防寒対策」と「換気」のポイントを整理するとともに、もう1つ注意したいポイントを紹介したいと思います。
冬期間の哺乳量増給
牛たちは気温の低下に伴い、寒さに耐えるために、体温維持のエネルギー要求量が増加します。
このことは、哺育牛に限らず成牛、育成牛でも同様のことが言えます。特に離乳前の出生後~3週齢の子牛は他の週齢の子牛と比べて、寒冷耐性が低いことが知られています。
表1に低温に伴い必要となるエネルギー要求の増加量を示しました。
出生後3週齢までの子牛では、夏期の気温20℃環境と比較して、冬場の気温0℃環境では余計に746kcalも必要になります。
これでは、夏場と同量の代用乳を給与していたのでは、とても補いきれません。
宗谷管内の調査事例では、代用乳の給与量が0~3週齢での栄養要求量(NRC2001)である2,437 kcalに満たない農家が57%ありました。
本格的に冷え込む前に、徐々に代用乳の増給をして慣らし、厳寒期には夏場より1.5~2リットル程度増給できるようにしましょう。
防寒対策は床面や上部にも
すでに子牛用の防寒チョッキ、電熱ヒーターなどの防寒対策を施している方も多いと思います。
ハッチ内の敷料は夏場の1.5倍から2倍量の敷料を投入することで地面から体温が奪われるのを防げます。
床面にゴムマットや発泡断熱フォーム等を用いることは、コンクリートに比べ、約12倍から70倍も熱が伝わりにくく、体温が奪われる事を防ぐ効果の高い対策です。
断熱材等を使用する場合は尿溜りができないよう、緩傾斜をつけるか、穴開け加工が必要です。
天井の高いD型牛舎などにペンを集積している場合は、ペンの上にベニヤ板等の天板を載せることも保温に有効です。
換気対策は最重要項目
図1のように、舎内でいくら保温対策をしていても、空気が澱み、ジメジメとしてアンモニア臭が漂う環境の方が、子牛に与える影響は大きいです。
離乳後の子牛であれば、前述のような環境よりも、舎外のハッチの方が、常時新鮮な空気が得られ、日中は日光浴も可能など、逆に子牛にとってストレスフリーになる場合もあります。
冬期に誕生した子牛を、下痢や肺炎を招くことなく成長させるためには、換気対策や防寒対策は言うまでもなく、代用乳の増給もしっかり行ない、元気な育成牛を育てましょう。