酪農家ができる削蹄技術

酪農家ができる削蹄技術

 定期的な削蹄は、多くの酪農家を悩ませる「蹄病」の予防に効果的です。しかし、蹄病に罹患した牛を発見した時は、できるだけ早く治療(削蹄)することが大切です。

1 削蹄が必要な理由

 蹄は堅い部分である蹄鞘、蹄の角質を生成する蹄真皮、蹄骨からなっています(図1)。
 蹄の重心は趾軸に対して真っ直ぐになっていますが、蹄が伸びて蹄尖(つま先)の角度が低くなると重心が蹄腫(かかと)にずれ、蹄骨の一部が蹄真皮を圧迫します。圧迫が長引くと、蹄真皮が炎症し角質の形成が不安定になります。
  そのため、蹄の形は削蹄により正常に保つことが必要です。

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図1 蹄の構造と蹄病の発生要因(酪農家ができる肢蹄のモニタリングと削蹄技術より抜粋)

 

 

2 削蹄手順 

 普通、蹄は前足は内蹄、後足は外蹄の方が大きいので、基準となる小さい方の蹄から削蹄します。つまり、前足は外蹄、後足は内蹄から削蹄を始めます。

 

ステップ1~基準蹄をつくる~

 

1 基準蹄の背壁の長さ(蹄の硬くなっている部分から蹄尖まで)が7.5cmになるよう剪鉗で伸びた部分を切除します(写真1)。

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写真1 ステップ1-1 背壁を7.5cmに整える

 

2 蹄尖の角度が50~52度になるように蹄底を削ります(写真2)。蹄尖を重点的に削り蹄腫はほとんど削りません。
この際、グラインダーがあれば、素早く削ることができます。

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写真2 ステップ1-2 蹄底の角度が50~52度になるよう削る

 

ステップ2~もう一方の蹄を合わせる~

  基準蹄に合わせて、もう一方の蹄を削蹄します。背壁を整え、蹄底を削り、基準蹄と蹄底面が同じ高さになっているか都度、確認しましょう。削りすぎて凹んだ場合は、無理に整える必要はありません。

ステップ3~土抜きをつくる~

  土抜き(土踏まず)は、内蹄と外蹄の負面(地面と蹄底が接触する部分)の面積を等しくするためにつくります。土抜きの範囲は、白線の始まりから軸側の白線が見えなくなる部分までの幅の3分の1です(後足の外蹄は3分の2)(写真3)。括削刀で下から上へ向かって削るのがコツです。指で蹄底を押して、柔らかく感じたらそれ以上は削らないようにしましょう。
 仕上げにグラインダーで蹄の縁を滑らかにします。

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写真3 下から上に向かって蹄底を削り土抜きをつくる
 

 

 

3 乾乳(育成)期の削蹄効果

 削蹄は、分娩1~2ヵ月前に行うと泌乳前期の蹄病が軽減され、乳量が増加するという研究結果が報告されています。
 実際、日々の作業の中で削蹄を行うのは困難かと思います。そこで、まずは乾乳群へ移動する際に足の悪い牛だけでも削蹄してはどうでしょうか。

 

 

4 最後に

 

今回紹介した削蹄方法は、酪農試験場のホームページで公開されています。また、削蹄講習会のビデオが普及センターにありますので、ご要望の方はご連絡下さい。
 尚、削蹄を行う際は、安全に十分注意して行ってください。
   

 

 

 

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