後産停滞の対処方法~試される後産の処置~
なかなか落ちない後産は、「自然に落ちるまで放置」、「引っ張って落とした方が良い」というように異なる意見を耳にします。
今回は、どちらの対処方法が良いのかについて、白糠町4Hクラブ(以下、白糠4HC)がプロジェクト活動で調査した結果をご紹介します。
1 後産停滞とは
後産停滞の定義は、文献によって様々ですが、「12時間以内に後産が出ない状態」を言います。後産停滞した牛の多くは、子宮内膜炎を併発し、受胎率の低下などを招いてしまう可能性もあります(写真1)。
s 写真1 後産停滞は子宮内膜炎を招く可能性がある
そのため、乾乳牛の栄養や分娩環境に注意し、まずは後産停滞にさせないことが大切です。それでも後産停滞の牛を発見した際は、後産の処置が必要です。
2 調査方法
クラブ員6名が行った調査方法は、分娩後の牛の状況を記録し、「後産を手で引っ張って取れそうだったら引っ張った牛」と「そのまま様子をみた牛」の初回授精日数と空胎日数を比較しました。後産を引っ張る力加減は重さにすると1~2kg(500mLペットボトル2、3本分)ほどです(写真2)。
写真2 後産は無理に引っ張らない
3 調査結果と考察
後産停滞が発生した3農場の記録を集計しました。その結果、「後産を手で引っ張った牛」の方が、初回授精日数、空胎日数ともに短くなりました(表1)。さらに、これらの繁殖成績が良くなる分、治療費も減少することがわかりました。
結果から、後産を手で引っ張って落とした方が、子宮の回復が早く、初回授精も早まり、最終的には空胎日数も短くなったと考えられました。
ただし、子宮を傷つけてしまう可能性があるので、無理やり引っ張ってはいけません。また、後産停滞した牛が発熱、食欲不振を呈している場合は、一度獣医師に診てもらいましょう。
4 後産停滞の原因を調査
特に後産停滞の多かったA農場と少なかったB農場を比べてみると、乾乳牛の飼養環境に違いがありました。
A農場は、1頭当たりの飼養面積が6.1平方メートルだったのに対し、B農場は51平方メートルと、飼養面積に余裕がありました(表2)。このことから、後産停滞の原因の一つは、過密によるストレスだと考えられました。
5 最後に(4HC員より)
白糠4HCは今回の調査結果を全道青年農業者会議で発表し、優秀賞を受賞しました(写真3)。今後は、後産停滞が発生しなかった農場において、その要因を調査する予定です。この他にも、初産分娩月齢の短縮に向けた活動も行っています。
これからも白糠4HCは、精力的に活動していきます。
写真3 全道青年農業者会議にて優秀賞を受賞しました。