共に働くパートナーとして 牛と人との良好な関係性を

共に働くパートナーとして  牛と人との良好な関係性を 

 牛に不安感を与えないことは、作業を効率的かつ安全に進めるために重要なことです。しかし牛に慣れていない実習生や従業員は、牛との距離感がつかめず、作業効率の低下や事故に繋がりやすくなります。
 今回は、牛と人との良好な関係を築くことの重要性と生産性への影響について紹介します。

恐怖を感じる牛に安心感を

 牛と人が良い関係性を築くために必要なことは、牛が恐怖に感じることを、そうではないと慣れさせることです。
例えば、初産牛は初めての搾乳を恐怖と感じて脚を上げることがあります(写真1)。しかし、ここでの人による過敏な反応や対応は、牛がより恐怖を感じ、蹴り癖を誘因させ、人と牛の関係性を悪化させてしまいます。そのため、時間を掛けてでも搾乳が恐怖ではないと教えてあげることが大切です。
 従事者の根気強い対応によって、牛の恐怖を安心感と信頼に変えてあげましょう。

 

 

 

 

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写真1 初産牛は初めての搾乳を恐怖と感じやすい

 

牛を扱う際に気をつけるポイント

  搾乳や牛追いなど牛に接する作業は、最も事故が生じやすい状況です。従事者は危険を予測し、事故を起こさないようにすることが重要となります。

(1)牛の死角(真後ろ)に立たない
    牛の視界に入る位置で作業し、牛に不安を与えない。
(2)牛に近づく際は声を掛ける
    従事者は自分の存在を牛に教えてあげる。
(3)素早い行動や、走ったり、大きな音を立てない
    牛は人の急な動きや音に警戒する。
(4)不安そうに行動しない
    牛は従事者の不安を察知し、警戒心を抱く。
(5)牛の体に触れながら作業する
    牛の体に触れていることで、 牛が蹴る前に感知でき、身をかわすことができる(写真2)。
(6)牛の間で作業する際、従事者の背後の牛にも注意する
    目の前の牛に気を取られすぎず、周りの牛にも気を配り、危険を察知する。

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写真2 牛の近くで作業する際はいつでも危険を回避できる準備を

牛との関係性と乳生産

  牛と人との関係性が良好であれば、乳量は相対的に多いと言われています。学術研究においても、搾乳牛に親しみを込めて名前をつけている牧場では、名前をつけていない牧場よりも乳量は多かったことが報告されています(Bertenshawa C, Rowlinson P 2009)。これは、名前をつけることで一頭一頭への関心が増し、管理が行き届きやすくなったためと考察されています(写真3)。

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写真3 名前をつけて個体ごとの管理を行き届きやすく 

 一方、従事者が怒鳴るなどで牛が恐怖を感じると、乳房内残乳量の増加や乳成分値の低下が生じ、生産性は減少します。

最後に

  牛は人と同様に、大切にされると幸せを感じる生き物です。
  まずは牛に声を掛ける、優しく触れることから信頼関係を築き、作業効率&乳量アップを目指してみてはどうでしょうか。

 

 (令和元年7月 釧路中西部支所作成)

 

 

 

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