搾乳管理の重要性を考えてみましょう

搾乳管理の重要性を考えてみましょう 

    作業に慣れていない実習生や後継者に作業の意味や目的を理解させることは、生産性を高めるために重要です。そのなかで、搾乳は収入に直接影響を与える作業であり、乳房炎の意味を理解し、ここで損失を少なくすることが重要です。
 

乳房炎と経済性

 乳房炎は、症状を実際に呈する「臨床型」と、症状を呈さないが乳量の減少等を引き起こす「潜在性」に分けられます。
 臨床型乳房炎の治療により10日間の出荷停止があるとすると、1頭あたりの年間乳代は約10%減少します(H28年農水省生産統計)。また、泌乳期間中に慢性的に乳房炎になると、利益はさらに減少します。
 実際、潜在性乳房炎は臨床型乳房炎より損失が大きいことがわかっています(図1)。そのため、目には見えない炎症による乳腺細胞の損傷が、乳生産を阻害していることを理解することは重要です。
 乳腺細胞の健康を推測する指標として「体細胞数」があります。バルク乳の体細胞数から本来生産される乳量損失を予測することができます(表1)。
 例として、年間出荷乳量が800tの牧場が体細胞数25万/mlから15万/mlに改善されたとします。これにより損失率は2%減少し、16tの乳量増加が見込めます。乳価100円/kgとすると160万円の増収となります。 

 

 

 

 

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図1 乳房炎による経済損失(Philpot N.W.N. 1978)

 

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表1 バルク乳体細胞数と乳量損失率(全国乳質改善協議会 1986)

 

乳房炎予防のために

 

乳房炎の発生要因は多岐にわたるため、様々な観点から対策を実行することが重要です。
 (1)健康の維持
    牛の免疫力低下が病原菌の感染を助長させます。
    【対策例】
    ・栄養の確保(十分な乾物 摂取量やビタミン確保)
    ・清潔な水(写真1)
    ・ストレス軽減(暑熱等)

 

 

 

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写真1 ウォーターカップの清掃

 (2)環境整備
       乳房の汚れは、乳房炎のリスクと直結します。
    【対策例】
    ・こまめな除糞
    ・豊富な敷料
    ・牛舎の清掃
    ・カウトレーナーの設置
    ・適切な飼養頭数
    ・糞尿の飛散防止(写真2)

 

 

 

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写真2 通路に敷料


 (3)適切な搾乳手順
       乳頭口を守る手法により病原菌の侵入を予防できます。
    【対策例】
    ・十分な搾乳刺激
    ・過搾乳の予防(ライナー スリップやマシンストリ ッピングを無くす、自動 離脱の設定等)
    ・ポストディッピング

 

 

 今一度、牧場内で、搾乳管理の目的を作業者全員で再確認してみて下さい。

 

 

 (令和元年6月 釧路中西部支所作成)

 

 

 

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