牧草の多草種・多品種活用について
近年は温暖化の影響などで、干ばつ、長雨、台風など牧草の生育に厳しい環境下にあります。
また、北海道の草地更新率は約4%(平成29年平均)と進まない現状にあり、植生が悪化しているほ場も多く見受けられます。
そこで、高栄養の牧草を収穫するための多草種・多品種の活用について、現地から得られたデータを基に考えてみます。
イネ科草種について
イネ科草種の特徴
現在販売されているイネ科の草種は、表1のように8草種あります。特徴は、栄養価や耐寒性、根張り、耐水性など多くを兼ね備えています。草地はこの特徴を活かし混播することで、より長く安定した収量や栄養価確保ができます(写真1、表1参照)。
表1 イネ科牧草の特徴
写真1 イネ科牧草の根張りの違い
イネ科牧草の繊維含量
平成26年、当支所試験ほから地域の基幹草種であるチモシーの中生出穂期6月24日に収穫した7草種を分析した結果、次のような事が分かりました(図1)。 総繊維(以降NDF)は、PRが最も低く、次にTF、FR、TY、OG、MF、KB、の順に高まっていました。
このデータより、TY中生出穂期におけるNDFは、PR、TF、FRの順に低いことが分かりました。釧路地域では、TY以外にも栽培に適した草種があると分かりました。
多草種・多品種の活用事例令和元年の1番草の収穫作業は好天の中、順調に進んだため、栄養価の高い粗飼料確保が期待されました。
図1 NDF含量の違い(平成26年釧路中西部支所)
多草種・多品種の活用事例
草地更新時に農業者と共に栄養価と植生の維持を図る目的で、多くの草種・多品種を組み合わせ、実規模のほ場で取り組みました。TY3品種と他イネ科4品種マメ科1品種の計8品種を利用しました(図2)。
図2 5草種8品種播種量(kg/ha)
TYは、極早生、早生、中生、晩生と出穂期が約3週間程度の期間があるため、収穫時のタイミングのずれを補うよう3種類を用いました(写真2)。その結果、令和元年6月11日の1番草のNDFは、経年草地より7ポイント低い62%でした。
写真2 出穂の違い(7月16日)
現場からの播種後の結果を活かし、多草種・多品種の特徴を最大限活用し草地の状況や、収穫方法に合わせて検討してみませんか。
(令和2年2月 釧路中西部支所作成)
この情報は釧路中西部支所が担当地域の農業者に向けて発信したものです。