飼料用とうもろこしの安定栽培のために
釧路中西部管内において、飼料用とうもろこし(以下コーン)の栽培面積は10年前と比較して約44%も増加しました。理由として5月から9月までの平均気温が2010年代で約1℃上昇したことや配合飼料価格の高止まり等が挙げられます。
しかし、コーンの収量は、その年の気象条件等に左右されやすい特徴があります(図1)。今回、収量安定対策の1つとして肥効調節型肥料について試験結果を交えて紹介します。
肥効調節型肥料とは、すぐに吸収されず、分解を作物の吸収パターンに調整した肥料のことです。
図1 コーン乾物収量の推移(釧路中西部支所管内)
生育停滞と追肥
平成30年は、6月下から7月中旬にかけての長雨により、養分の流亡が起こり、その後、生育が停滞しました(図2)。
図2 長雨の影響
本来は、状況に合わせて追肥を実施することが令和1年の試験場の成績からも推奨されています。しかし、トラクターの踏み倒しによる枯死なども考えられ、実践される方はいらっしゃいません。
そこで、今回、追肥と同じ効果がある資材として、被覆肥料について試験しました。
被覆肥料について
特徴は、温度に反応して溶けること、土質やpHの影響を受けないことです。
被覆肥料の溶けやすい部分だけ先に溶出し、その後、コーティングされた窒素分が温度に反応して溶出していくという作用機序になっています。
試験結果
今回、収量性は差がありませんでした(図3)。
図3 乾物収量
しかし、ほ場外周のすす紋病罹患程度には差は見られました(写真1)。
写真1 ほ場外周のすす紋病罹患程度の違い
令和1年は、長雨こそありませんでしたが、生育後半の窒素切れを被覆肥料によって回避できる可能性が今回の結果
から示唆されました。
また、他地域において、長雨の影響があった平成30年で、被覆肥料により約12%の増収があるという報告もあります。
以上のことから、リスク回避や追肥の労働軽減の面で、活用も検討できると考えます。
コーンの安定栽培技術は他にも色々あります。ご興味のある方は是非、普及センターまでお問い合わせ下さい。
(令和2年2月 釧路中西部支所作成)
この情報は、釧路中西部支所が担当地域の農業者に発出したものです。