乾物摂取量を高める飼槽管理
TMRセンターの同じエサを使っているのに、農場間の採食量に差があることが見られます。産次数や搾乳日数に大きな差がなければ、飼槽管理に何か違いがあるのかもしれません。
今回は、乾物摂取量を高める飼槽管理についてご紹介します。
1 なぜ乾物摂取量が重要か
水分を除く成分のことを「乾物」といい、牛が食べた乾物量を「乾物摂取量」といいます。
水分はエネルギーや栄養素にはならないので、牛が十分なエサを食べているかは乾物摂取量で判断する必要があります。
乾物摂取量が少ない牛は、生命維持に栄養を使うことに精一杯で、乳量や繁殖など生産性に悪影響を及ぼします。
2 牛がエサを食べているか
牛が乾物摂取量を満たしているかの目安にルーメンフィルスコア(RFS)があります。
RFSは、牛の左側の肋骨と腰角の間に位置する「ルーメン」の膨らみで判断します。
ルーメンが大きく丸く膨らんでいる牛はエサを十分食べています(写真1)。
写真1 「ルーメン」の膨らみで食い込みを判断
しかし、三角形に凹んでいる牛は、病気や分娩直後、嗜好性の悪いエサなどが要因でなければ、飼槽管理により乾物摂取量を高めることができます。
3 乾物摂取量を高める飼槽管理
給餌
(1)新鮮な飼料給与のため、飼槽を掃除してから給餌する
(2)1回給餌で給餌後、一時間と四時間以内にエサ寄せできない場合は、夕方に給餌を行う (夜間は飼槽のエサの動きが緩慢になるため)
(3)2回給餌の場合は、夕方の給餌量を多くする(例:夕方7割、朝3割)
(4)飼槽はカラにせず、常にエサがある状態にする(写真2)
写真2 エサは切らさずいつでも食べられるように
(5)給餌量は残餌が給餌量の5%程度となる量にする
エサ寄せ
(1)1度目のエサ寄せは、給餌後 一時間以内に行う
(2)その後もできるだけ頻繁に行う(今よりもう一回増やす) (3)牛がエサを食べやすいように、エサは飼槽壁から30cm離した位置に置く(写真3)
写真3 エサ寄せする時は飼槽壁から30cm離した位置に
その他
(1)引き込み防止装置を設置して、飼槽からのエサのロスを減らす(つなぎ飼い)(写真4)
写真4 ゴムマットの切れ端を利用した引き込み防止装置の事例
(2)水槽、ウォーターカップは定期的に清掃し、なるべく清潔な状態を保つ(写真5)
写真5 エサが入っていたら、「発見した時」に取り除く
最後に
毎日のちょっとした管理の差が、乾物摂取量と乳量を変化させているのかもしれません。
今回紹介した内容は、すぐにでも取り組めることもあるので、今日から実践してみてはどうでしょうか。
(令和2年3月作成)
この情報は、2020年4月に釧路中西部支所が地域の農業者向けに発出したものです。