サイレージ発酵品質を考えよう~前編~

サイレージ発酵品質を考えよう~前編~

「良いサイレージ」には、2つの要因があります。1つは栄養価が高いこと、もう1つは発酵品質が良いことです。栄養価は乳量に、発酵品質は採食量に反映されます。たとえ栄養価の高いサイレージでも、発酵品質が悪いために牛の採食量が落ちては、原料草の良さを生かし切れません。サイレージ発酵品質を考え、良いサイレージ作りを目指しましょう。

  発酵品質の決め手は?   

 

 (1)収穫時の牧草の切断面・切断長

シャープな切断面、適切な切断長で収穫することで鎮圧がかかりやすくなります。収穫に入る前にハーベスタの刃を研磨し、切断長は10ミリ程度をお勧めしています(写真1)。

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写真1 牧草切断面

(2)牧草水分

乳酸発酵は牧草の水分に大きく影響されます。乳酸菌にとって良い環境は水分70%~75%といわれています(図1)。高水分環境では酪酸菌が有利となり、低水分では踏圧がかかりにくく、空気混入によるカビが発生しやすくなります。予乾の実施や刈り倒し時期を見極め、適正水分を目指しましょう。

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図1 牧草水分と乳酸発酵

(3)ギ酸の適正量添加

ギ酸を添加することでpHが下がり、高水分でも酪酸発酵を防ぐことができます。しかし、過剰添加によりpHを下げすぎると、乳酸発酵も止めてしまうため注意が必要です。昨年、普及センターが標茶町で行った調査では、pHが下がりすぎている農家が多いことが分かりました(図2)。ギ酸を使う場合、pHは3.8~4.2程度に調節し、適正量を添加しましょう。

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図2 令和2年収穫作業時の牧草pH

 

(4)サイロ内への異物混入防止

サイレージに土砂や堆肥が入り込むと、カビや酪酸発酵の発生につながります。スラリーや堆肥は、収穫の45日前までに散布し、牧草への残留を防ぎましょう。
また、、作業場を砂で整備することで、調製作業時のダンプ等のタイヤからの土砂混入を緩和できます。利用する砂は、微生物(カビの要因)や有機物の豊富な黒ボク土ではなく、無機物主体の白砂がお勧めです(写真2)。
ダンプのタイヤを収穫した草に乗り上げないようにすることも、土砂混入の防止につながります。

 

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写真2 サイロ周辺が砂で整備された標茶町G農家

 

(5)サイロ周辺の整備

サイロ周辺の物が片付いていることで、調製作業がスムーズになります。それにより、踏圧作業の時間が確保でき、鎮圧がより強化されます。
子牛は抗体を持たないで生まれてきます。そのため、初乳によって抗体を得るまで病原菌に対して無防備です。したがって、子牛の抗体獲得とエネルギー補給のために初乳を飲ませることは重要になります。

 

 

 

天候に左右されないサイレージ作りを!

 

牧草収穫は天気の影響が大きいですが、人の手によって、よりよい発酵品質を目指せるポイントがたくさんあります。少しの手間で、その後1年間のサイレージ発酵品質が少しでも良質になるよう、意識してみてはいかがでしょうか。

(令和3年4月作成)

この情報は、2021年5月に本所が地域(標茶町・弟子屈町)の農業者向けに発出したものです。

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