草地のチモシー維持のために(収穫前後の管理編)
春作業も終わり、今年も牧草収穫の時期がやってきました。今回は、草地のチモシー維持のために収穫時に取り組めることを紹介します。チモシーの再生を助けることで植生を維持しましょう。
1番草収穫後のチモシーの再生
牧草は多年生のものが多く、株は何年も生き続けますが、茎(分げつ)には寿命があり、毎年何割かずつ世代交代しています。チモシーの場合は、1番草で刈り取られた茎は枯死しますが、株元にある球茎から新しい分げつが発生し世代交代します(図1)。しかし、新しい分げつが発生するまでには時間がかかるため、他の牧草と比べ、雑草の侵入する機会も多いのが特徴です。そのため、再生をスムーズに行わせ、雑草の侵入を防ぐことがチモシーの維持には必要です。
図1 チモシーの再生
刈取高10㎝以上でチモシーの再生を守る
収穫時の刈取高はチモシーの次の分げつの発生数に影響します。表1は1番草収穫時の刈取高別での再生の違いです。収穫から3週間後に採材したチモシーで比べると刈取高7㎝と比べて14㎝の方が分げつの本数が多いことがわかります。新たな分げつは、個体によって地際より5㎝ほど高いところから発生することもあり、刈取高が低いと再生芽も一緒に刈り取ってしまい、枯死させる可能性があります。
表 1 刈取高別の収穫後の再生の様子 【採材日】2019年7月12日
また、草地は軟らかく凹凸もあるためタイヤが沈みやすく、設定した高さよりも刈取高が上下します。刈取高11㎝で設定していても、実際は60%の株が設定刈取高以下となる可能性があります(図2)。刈取高を10㎝以上に設定することで異物混入を防ぐだけでなく、チモシーの再生を助けましょう。
図 2 設定刈取高11cmの実際の刈取高
チモシー収穫後は確実な追肥を
1番草収穫後の追肥も次の分げつの発生数に影響します。チモシーの再生が年間で最も旺盛になるのは世代交代の行われる1番草収穫後です。この時期に窒素を施肥することがチモシーの茎数維持には不可欠です(図3)。2番草の収量だけでなく、翌年の1番草の茎数を決める重要な時期です。肥料高騰の影響もありますが、植生の良い草地を優先して追肥するなどメリハリを付けた管理を行いましょう。
図 3 チモシー1番草刈取後の窒素施肥量と2番草の全茎数(松中、1987)より作図
この情報は2023年6月に釧路農業改良普及センター東部支所管内(厚岸町、浜中町)の農業者向けに発出した情報です