発情周期に関わるホルモンについて

今回は、乳牛の発情周期に関わるホルモンについて、おさらいしましょう。

1ホルモンを分泌する器官

乳牛のホルモン動態に関わる主な器官は、「視床下部」、「脳下垂体」、「子宮」、「卵巣」です。卵巣には「卵胞」、卵胞が排卵し変化してできた「黄体」があります(図1)。

卵巣の構造の写真

図1卵巣の構造

乳牛の発情周期(平均21日間)は、これらの器官から分泌されるホルモンが相互に作用し調節することで、引き起こされています。

2ホルモンとその作用

〇プロジェステロン

黄体から分泌され、妊娠を維持するために他のホルモンの分泌をコントロールします。

〇FSH(エフエスエイチ)

脳下垂体前葉から分泌され、卵胞を発育させます。

〇PGF2α(プロスタグランジンエフツーアルファ)

子宮から分泌され、非妊娠時に黄体を退行させ発情を誘起します。よく耳にする「PG」は、このホルモンのことです。

〇エストロジェン

卵胞から分泌され、発情兆候(透明粘液の排出など)や発情行動(スタンディングなど)を引き起こします。

〇GnRH(ジーエヌアールエイチ)

視床下部から放出され、卵巣を刺激し、LH、FSHの分泌を促進します。ちなみにGnRHは、製剤名の方が聞き覚えがあるかと思います(何かは獣医師に尋ねてみてください)。

〇LH(エルエイチ)

脳下垂体前葉から分泌され、発育した卵胞の成熟や黄体の形成を促進します。また、大量に分泌される(これをLHサージといいます)ことで、排卵を引き起こします。

以上の説明を表1にまとめました。確認したいときなど、ご活用下さい。

表1発情周期に関わる主なホルモン
ホルモン名分泌器官作用
プロジェステロン黄体妊娠維持、発情抑制
FSH脳下垂体前葉卵胞発育
PGF2α子宮黄体退行
エストロジェン卵胞発情誘起
GnRH視床下部LH、FSH分泌促進
LH脳下垂体前葉卵胞成熟、黄体形成、排卵誘起

3繁殖障害とホルモン製剤

卵巣に関する繁殖障害とその対応(ホルモン分泌のコントロール)に用いられるホルモン製剤についてご紹介します。

○黄体遺残

非妊娠にもかかわらず黄体が長期間存在するものをいいます。
原因は子宮内膜の異物、炎症による子宮内膜機能の乱れなど。
対応には、黄体を退行させるために、PGF2α製剤を投与します(非妊娠を必ず確認)。

○卵胞嚢腫

成熟卵胞の大きさ(25mm)を超えても排卵せず長く存続するものをいいます(写真1)。

卵胞嚢腫の写真

写真1卵胞嚢腫

原因は高泌乳やストレスなど(はっきりした原因は不明)。
対応には、LHサージを引き起こし排卵を誘発させるために、GnRH製剤またはLH様作用のあるhCG製剤を投与します。

おわりに

本稿をきっかけに、曖昧だったホルモンについての理解が深まり、授精師や獣医師との会話の一助になれば幸いです。

(この情報は2022年9月に地域(釧路市、白糠町および鶴居村)の農業者向けに発信した技術情報です)

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