購入飼料代や肥料代が高騰している今、良質なサイレージを確保することは重要です。今回は、サイレージの品質向上・維持の技術について確認しましょう。
サイレージ調製前
サイロ周辺の整備
バンカーでは掃き掃除や、石灰水等で洗浄を行い、残さを除去しましょう。また、床面を補修して残さが詰まるのを防ぎましょう。スタックでは作業場を無機物主体の白砂や火山灰等で整備することで、土砂混入を緩和できます。
草地へのスラリーの散布
スラリーの散布量が多く、さらに散布時期が遅くなるほど、牧草への付着が多くなり、サイレージの発酵品質を低下させます。そのため、牧草収穫の50日以上前までに散布を終えるようにしましょう(図1)。さらに、スラリーの粘度が高いと牧草に付着しやすく、サイレージ品質低下の要因となります。曝気や加水によって粘度を下げて散布すると、牧草への付着を少なくすることができます。
図1 スラリー散布方法の違いによる原料草の洗浄液の比較
サイレージ調製
土砂や枯れ草の混入を防ぐ
原料草への土砂や枯れ草などの混入も不良発酵の要因の一つとなります。そのため、「運搬車両のタイヤに付着した土砂を入れない」「収穫時高刈り(10cm)をする」ことを意識しましょう。
ハーベスタの刃を研磨する
原料草の切断面がぼそぼそだと踏圧がかかりにくくなります。切断面を鋭く保つために、こまめに(半日に1回)ハーベスタの刃を研磨しましょう。
水分を調整する
乳酸菌を活動させるためには、牧草の水分は70~75%の間が適正となります。目安として半日程度の予乾で適正水分にしましょう。予乾が困難な場合はギ酸を添加することによって強制的にpH4.2以下に下げ、乳酸菌の働きに頼らず、酪酸菌増殖を抑える方法もあります。
十分な踏圧を行う
乳酸菌を増殖させるためには、十分な踏圧による空気の遮断が重要です。踏圧を高めるためには、「一度踏圧したら再度削り取らない」「原料草を厚さ30cm以下に拡散し、同じ場所を二度踏圧する」ことを意識しましょう。
詰め込み中断時の対応
日をまたいで調製するなど詰め込みを途中で中断する場合、原料草が空気に極力触れないようにシートで保護しましょう。また、塩やプロピオン酸を表面に添加することで、二次発酵を防ぐことができます。
サイレージ使用時
サイレージの取り出し
サイレージをトラクターのバケットで取り出す際は、下からすくい上げるように取ると、中まで空気が入りやすくなります。バケットの背を使って、上から削り落とすように取り出しましょう(図2)。
図2 サイレージの取り出し方法について
取り出し後のシート管理
取り出し面が長時間日光に当たると、二次発酵の進みが早くなります。取り出し口を北向きにする、シートで覆う等、できるだけ直射日光が当たらないような対策を検討しましょう。
計画的なサイレージの取り出し
サイロ1面を全体的に、1日30cm以上取り出せるようにすることも、二次発酵防止に有効です。
おわりに
紹介したこと以外にも、農家や地域毎に適合した技術があります。サイレージ品質について悩んでいる方は、普及センターにご相談下さい。
この情報は2023年4月に地域(釧路市、白糠町、鶴居村)の農業者向けに発出した技術情報です。