1.乳牛への暑熱ストレスの影響
泌乳や繁殖などの生理現象は、ホルモンの働きによってコントロールされています。目に見えないながらも、その働きは酪農経営において重要視しなければならないものです。乳牛が受ける様々なストレスは、脳(下垂体)の働きを誤作動させ、ホルモンの分泌を狂わせることで、生産を低下させる要因となります。
その中でも暑熱ストレスは、最も繁殖に悪影響を与えます。
2.暑熱ストレスが始まる目安
乳牛の適温はおよそ5~20℃、中でも最も快適に過ごせる温度は13~18℃と言われます。ただし、暑熱ストレスには、気温だけでなく湿度も関係します。温度と湿度で表される指標が重要です(図1)。
乳牛は、人間よりも暑熱に対してデリケートです。デジタル温湿度計やTHIの計測器も市販されています。乳牛の飼養空間を測定できる場所に設置し、上手に活用しましょう。
図1.温度、湿度から暑熱ストレスを評価する指標
3.暑熱ストレスを受けた牛は
①呼吸数が増加
通常、呼吸数は10~20回/分ですが、暑熱時は体温を下げるために呼吸が浅く、多くなります。 また、呼吸を優先させるため、反芻が減少・停止することもあります。
②体温が上昇
体温が39.2℃以上へ上昇。子宮内温度上昇による受胎への影響が懸念されます。
③乾物摂取量が低下
乾物摂取量の低下、夜間の固め食い、濃厚飼料の選び食いも増加します。
④行動が変化
多数の牛が密集し起立する、パーチング(写真1)等の行動が見られるようになり、蹄への負担が増します。
写真1 パーチングする牛
①や③の理由により、暑熱時はルーメンアシドーシスの危険性が高まります
4.暑熱ストレス対策
①換気、送風
換気は、牛舎内の空気を清潔に保つために一年中必要です。特に暑熱時は、扇風機や換気扇を利用した強制的な風の流れが必要となります。
つなぎ牛舎においてはトンネル換気や吊り下げ式ファンの設置台数や位置、フリーストール牛舎では扇風機設置の優先順位などを検討する必要があります。
②飲水
暑熱時には、発汗や呼吸により水の消費量が増えます。乾物摂取量の低下を抑えるためにも、飲水量の確保が必要です。
夏期限定の水槽増設や、配管の交換など、準備を整えておきましょう。
③日光・熱を避ける
カーテンや機能性資材を活用した遮光や遮熱、パドックや放牧地における日陰の確保も重要です。
各対策における設置や活用については、普及センターへご相談ください。
この情報は2023年6月に地域(標茶町、弟子屈町、釧路町)の農業者向けに発出した技術情報です。