GAPの有効活用~リスクを低減するルール作り~
GAPとは、一般的に「農業生産工程管理」と呼ばれ、換言すると「農畜産物を作る際に適正な手順やモノの管理を行い、食品安全や労働安全、環境保全を確保する取組み」のことです。
日常的なリスク管理として、GAPを「行う」ことの取り組みを紹介します。
GAPでリスクを管理
農業を行っていく上で考えられるリスクには、異物混入などの食品安全のリスク、農機具による事故などの労働安全のリスクなど様々なリスクがあります。これらリスクの危害要因(図1)を特定し、対策を決め、実行しながらその効果を確認します。必要に応じ見直しながらリスクを低減する手法がGAPです。GAPは、改善を続けることで生産性の向上や安全の強化につながります。当然、法令も遵守しながら、自分達の農場に最も適したルールを作成します。
図1 危害要因の一例
GAPの5つの目的
GAPでは、次の5つの内容に関してルール作りを行い実施します。
- 食品安全(食品の汚染防止、異物の混入防止など)。
- 環境保全(環境汚染の防止、適切な土壌管理など)。
- 労働安全(危険な作業の把握、労働者の安全確保など)。
- 人権保護(就業規則の作成、保険への加入など)。
- 農場経営管理(教育訓練の実施、作業記録、外部とのコミュニケーションルールなど)。
例から取り組みを考えてみます
例1.食品安全【農場への病原体の持込み及び持出しのリスクに対して】
作業者の靴・手指の消毒、畜舎内への野生鳥獣の侵入防止、出入口へ衛生管理区域であることを示す看板の設置、出入り車輌の消毒設備の設置など、取組事項やルールを作成し、確認・点検を継続しながら適宜改善していくことが必要です(図2)。
図2 リスクに対して、いつ、誰が、どのように行うか具体的なルールを決める
(写真は防疫の一例)
例2.労働安全【牛舎内での作業中のけがのリスクに対して】
家畜に接触する作業、家畜の移動を伴う作業、作動する機器の停止方法の確認、事故発生に備えてリスクに見合う救急用品の準備、注意を要する頭上の配管など、作業者で話し合い取組事項やルールを作成し、確認・点検を継続しながら適宜改善していくことが必要です(図3)。
図3 危険箇所の明示、緊急マニュアルの作成も一つの方法
GAPに取り組んで良かったこと
- 責任の明確化と相互の作業認識に役立った
- みんなで話し合ってルールを作ったことで作業の改善につながった
- ミスやロスを未然に防げてリスクの軽減になった
などの感想が聞こえてきます。
全て取り組めない場合でも、自分の農場で「よくある」、「過去にあった」というリスクの対策から取り組むのも一方法です。