PAGsを上手に活用して繁殖改善
PAGs検査がスタートして約2年が経過しました。PAGの効果も現れてきました。PAGの仕組みを理解して、繁殖改善につなげましょう。
1 PAGとは
PAGsは妊娠時に胎盤から分泌される蛋白質です。現在、厚岸町・浜中町で使われている検査キットでは、表1の基準により妊娠-空胎を判定しています。
表1 PAGの判定基準
結果 |
PAG値 |
+ 高値 |
0.250以上 |
+- 判定保留 |
0.100~0.250 |
- 低値 |
0.100未満 |
2 PAG値の動き
PAG濃度は、授精後25日前後から上昇しはじめ、分娩時に最大となります(図1)。妊娠-空胎の判断は、PAGの分泌が活発化する授精後約28日目以降から可能です。
分娩後は、PAG値は一気に低下せず、徐々に低下します(図2)。そのため、流産直後は、+や±と判断される場合もあります。
図1 妊娠牛の乳汁中のPAG値の推移(イメージ)
図2 分娩後の乳汁中のPAG値の推移(イメージ)
3 意外と多い胚死滅・流産
流産(胚死滅)は妊娠初期に最も多く発生し、妊娠28~42日で受精した胚の10.9%は流産(死滅)してしまうという報告もあります(図3)。
授精後56日の直腸検査で妊娠を確認できた牛が、その後分娩予定日(妊娠282日)までに流産する確率は、10%程度ですが、授精後28日から分娩予定日までに流産する確率は20%以上です。
PAGで授精後28日に(+)判定になっても、妊娠の維持を確認するには、その後、複数回のチェックが必要です。
図3 妊娠日数別の妊娠牛の割合
4 PAGの上手な使い方
最大の強みは、授精後28日目から“空胎”をチェックできる点です。
この点を理解し、釧路東部管内で上手に活用されている事例を紹介します。
この農家の方は、2019年2月から乳検毎に、授精後28日以降の牛をPAG検査しています。表2のとおり、再授精までの間隔が短くなりました。結果的に空胎日数も短縮傾向にあります。
PAGによって空胎牛が早くわかるようになり、発情対象牛を絞り込めることができるので、授精後の再発情を見逃すことが少なくなりました。「発情発見するに人手がもう一人増えた感覚」で使えているということです。
表2 PAG 実施前後の再授精間隔・空胎日数の変化
再授精までの間隔(日)※1 |
空胎日数※2 |
|||
最短 |
平均 |
最長 |
|
|
PAG実施前 |
15 |
47 |
153 |
148 |
PAG実施後 |
19 |
35 |
77 |
139 |
※1 授精台帳より集計 普及センター調べ
PAG 実施前 3年8ヶ月間の授精牛
PAG実施後 10ヶ月間の授精牛
※2 牛群検定より集計
PAG 実施前 PAG実施直前月の年平均
PAG実施後 PAG実施11ヶ月後の年平均
こまめな飲水で熱中症を防ぎましょう。
この情報は、2020年8月に厚岸郡(厚岸町・浜中町)の農業者向けに発出したものです。