乳房炎を改めて考える(1) 乳頭の保護
酪農家の皆様にとって、乳房炎は永遠の課題です。乳房炎について改めて考えましょう。
乳房炎対策ですべきこと
乳房炎対策は、とても難しい問題ですが、実施すべきことは明確です。
なぜ乳房炎になるの?
ミルカーでの搾乳は、最も乳房炎になりやすい搾り方と言えます。
現実的ではありませんが、手搾りが最も乳房炎になりにくい搾り方です。
図1は、搾乳中の乳頭断面を表した絵です。手搾りは乳頭の付け根を逆流しないように押さえて押し出します。
ミルカーの搾り方は全く逆で、開いているときに真空の力で引っ張って搾ります。そのため引っ張られてうっ血しやすく、乳頭口も痛みやすくなります(図2)。過搾乳が御法度である理由です。
図1 搾乳時の乳頭断面図(左:搾乳中 右:休止中) ミルカーはこの動きを1分間に約60回繰り返している
図2 過搾乳によって傷んだ乳頭口(傷口内のSA:黄色ブドウ球菌は、ディッピング剤でも死にません)
荒れた乳頭口の問題点
図2の様な荒れた乳頭口は、3つの致命的な問題が生じます。
実は、搾乳後の残乳が無い方が乳房炎になりにくいです。しかし、残乳を減らそうとすると、ミルカーの仕組み上、乳頭口が荒れて、やがては間違いなく乳房炎になります。適度なバランスが重要です。
その他、清拭時の殺菌剤濃度が濃いと、乳頭が荒れます。推奨濃度を必ず守ってください。
ディッピング剤で乳頭が荒れると思われがちですが、殺菌剤の濃度に由来する肌荒れの事例が多く見られます。
次回に続きます。
(令和2年7月作成)
この情報は、2020年8月に本所が地域の農業者向けに発出したものです。