乳房炎を改めて考える (2) 乳頭の衛生
今回は、衛生管理を中心に考えたいと思います。
乳房炎対策ですべきこと
前回も触れましたが、傷んだ乳頭口(図1)では、乳頭清拭時に汚れをきれいに拭き取れません。
搾乳においては、乳頭口をきれいに拭き取ることが最も重要です。
図1 傷んだ乳頭口
次の対策を実施してみてください。
<乳頭口の荒れ対策>
(1)過搾乳を直ちに止める
(2)乳頭保護剤の利用(ファースト軟膏)
(3)余りにもひどい場合は、獣医師に相談(抗生剤利用時に、同時治療がお勧め)
細菌感染は搾乳中に起こる
傷んだ乳頭口では、細菌の侵入を防げないため、常に感染の危険が生じます。
通常の牛の場合、細菌感染が起こりやすい一番のタイミングは、搾乳中です。
そして、搾乳中に細菌が侵入する最大の要因は、真空圧の変動〔ライナースリップ〕です。
ライナースリップに注意
搾乳立会でライナースリップが多い農場は、総じて乳房炎の発生が多くなっていました。
ライナースリップ(空気の流入)が起こると真空圧が低下し、今まで引っ張られていた乳汁が瞬間的に逆流する現象が起こります。
その逆流と同時に、乳頭口周りの細菌も乳頭内に吸い込まれてしまいます。
図2 乳汁の逆流
もし、図1の様な乳頭口の場合、どうなってしまうかは容易に想像できます。泌乳後半では、乳汁で細菌を押し出すこともできないため致命的です。
ライナースリップを減らそう!
乳頭清拭を徹底して、逆流する細菌を減らすとともに、ライナースリップも減らす工夫が必要です。
ライナースリップは、乳頭が濡れている原因の他に、4本同時に泌乳が終わらず、出なくなった乳頭から空気が入り起こることが多くあります。
4本同時に泌乳を終わらせるための対策は次の3点です。
<4本同時に終える対策>
(1)初産から4本同時に外す癖を付ける(1本ずつ外すと分房差がより大きくなる)
(2)乳頭配置の良い種牛の選定
(3)ミルカー装着時にねじれが無いか、ミルカーの向きや傾きの修正
4本同時離脱ができない農場において、装着中にミルカーの向きが変わったり(最初に付けた乳頭がねじれ)、ミルカーを装着後離すと、ミルカーの向きが変わる(複数本の乳頭がねじれ)事例が多く見られました。
ミルカーが傾かずまっすぐ付く牛は、乳房炎になりにくいと思いませんか? 乳頭配置、ミルカーの向き・傾きも、細菌を侵入させない重要な対策です。
(令和2年8月作成)
この情報は、2020年9月に本所が地域の農業者向けに発出したものです。