今、改めて乳房炎対策を考えましょう!
乳房炎、体細胞数の上昇要因は様々です。以下の3点から整理して対策を考えてみましょう。
(1)乳検情報、生乳出荷旬報、バルク乳情報等から、体細胞数を時系列で整理しましょう。
複数年分のデータを整理すると、課題はより明確になります。
体細胞数の変化がある時
その時期の出来事は?暑熱(急な気温上昇)、放牧の開始等、その時期における課題を特定し、対策を実施することが有効です。
例:放牧開始時の馴致期間の設定、放牧地における避陰林の設置、給水施設の増設、牛道の整備(牛の汚れ防止)、各種暑熱対策の実施
リニアスコアに注目しましょう。
乳検に加入しているならば、「リニアスコア」にも注目しましょう。
下の体細胞数とリニアスコアの表のとおり、A牧場、B牧場では合乳体細胞数は同じ30万ですが、リニアスコア平均値は3.0、5.0と異なります。
1頭のみが高いA牧場と5頭が高いB牧場では、B牧場の方が事態は深刻です。より早い段階で問題が大きくなる前に乳房炎の課題に取り組みましょう。
A牧場 | a | b | c | d | e | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
体細胞数(万) | 5 | 5 | 5 | 5 | 130 | 30 |
リニアスコア | 2 | 2 | 2 | 2 | 7 | 3.0 |
B牧場 | a | b | c | d | e | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
体細胞数(万) | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
リニアスコア | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5.0 |
(a~e、それぞれの5頭の牛の乳量は同じ、と仮定しています)
(2)乳房炎の原因菌検査を確実に実施しましょう。
乳房炎の原因菌が、SA(黄色ブドウ球菌)等、伝染性の菌の場合、搾乳時に人の手やミルカーを介して牛から牛へと広まってしまいます。
対策としては搾乳順序を変更し、保菌履歴のある牛は最後に搾乳することで、牛群へのまん延を防止します。
その他にも難治療性の原因菌のものでは牛を淘汰することも検討が必要です。薬剤による治療は獣医師の指示にしたがいます。
(3)分娩場所は牧場内で最も衛生的に保ちましょう。
乳牛にとって、最も大きな身体的重圧は分娩です。そのときは新たな乳房炎感染が起こりやすい時期でもあります。分娩時に健やかに過ごすことができれば、その後の周産期病の発生率を下げ、乳生産効率を高め、経済性を高めることにつながります。
また衛生的な分娩環境は親牛のみでなく、生まれたての子牛にとっても疾病原因菌感染の危険性を低くします。
忙しい時でも分娩場所(分娩施設)の清掃・整備は最優先で行い、農場内で最も衛生的に保ちましょう。
写真:広々として、たっぷりの衛生的な敷料で牛は快適です。
この情報は、本所が2021年8月に地域の農業者に発出するものです。