乳牛繁殖成績の改善

乳牛繁殖成績の改善

繁殖成績は個体販売や乳量などが酪農経営に直結するため、その向上が課題となっています。
そこで釧路管内の普及センターでは令和2年に(1)人工授精師と獣医師を対象とした聞き取り調査(2)優良農家の事例調査を実施しました。今回はその結果を紹介します。

1 聞き取り調査結果

釧路管内の人工授精師と獣医師19名を対象に調査しました。
Q1:「あなたの地域の繁殖成績は良いか?」
A1:「良い」と回答した人は約1割という結果でした。繁殖について大多数の人が課題を感じているようでした。
Q2:特に「栄養不足」と「受精適期の見極め」を課題と感じているようです。次に「蹄の管理」「発情発見の向上」「授精技術の向上」等となります。
Q3:「受精率が良い牛の特徴は?」
A3:「BCS※が適正」が最も多く、次いで「蹄のの状態が良い」、「発情兆候が明確」でした。Q2で上位だった課題を解決するためにも、これらの特徴を意識することは、解決の糸口となるかもしれません。
※BCS(ボディコンディショニングスコア)とは、牛の太り具合の程度を数値化した指標。
Q4:「受胎率が良い農家の特徴は?」
A4:「BCSがそろっている」が多かったです。ほかには「疾病が少ない」とありました。優良農家は1つの技術だけでなく、繁殖管理全般に気を付けていることが伺われます。
Q5:「受胎率向上のために必要な管理は?」
A5:「発情行動の観察」が約4割で、人工授精師の多くはこれを選択しています。発情を見つけて初めて、獣医師や人工授精師による授精が行われます。
適期授精をするためにも、発情行動の観察は重要です。

獣医師・人工授精師が思う受胎率向上への重要なキーワード

2 事例調査結果

釧路管内の繁殖優良農家8戸を対象に調査しました。

栄養管理のポイントについて

牛の栄養状態(過肥・削痩)を確認して、エサを調製しているという回答が大多数でした。
過肥・削痩での分娩や分娩後のBCS回復遅延によって、周産期疾病の発生や空胎日数の遅延などが起きる可能性があるため、BCSの管理は重要です。

発情観察のポイントは?

「牛の行動全般を観察している」という回答は多数でした。
毎日の観察や記録は、どの農家も共通で行っていることで、中には複数のツールを活用し、記録している農家もありました。
「毎日の観察と記録」という基本を徹底することが重要です。

写真 発情観察ツール例

疾病対策のポイントは?

「蹄病対策」が重要と答え、定期的な削蹄や蹄浴を実施している農家が多数でした。また、「乾乳期から分娩直後に、低カルシウム血症などの周産期疾病対策を実施している」との意見もあります。
エサをよく食べ、発情行動を示してくれるためには、蹄管理や周産期疾病対策が重要です。

共通の傾向

・牛の栄養状態(過肥・削痩)を確認して、エサを調製している。
・牛の行動全般を観察している。また毎日の観察と記録という基本を徹底している。
・フリーストールでは蹄病対策が重要と挙げる農家が多く、定期的な削蹄や蹄浴を実施している。

(令和3年6月作成)

この情報は釧路中西部支所が担当地域の農業者に向けて発出するものです。

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