脂肪酸組成情報(デノボ)について
4月から集乳旬報に新たに脂肪酸組成の項目が加わりましたが、ご覧になっているでしょうか(写真1)
写真1 旬報の新たな項目
今回はこの項目についてご紹介します。
脂肪酸について
まず、脂肪酸について説明します。乳脂肪の98%は中性脂肪で、中性脂肪はグリセリンと3つの脂肪酸からできています(図1)。
図1 中性脂肪の構造
脂肪酸は炭素(C)がいくつも連結した構造で、その炭素の数(長さ)によって呼び名が変化します。例えば、炭素が4つあるもの(C4)を酪酸と呼びます。
脂肪酸組成について
乳脂肪には幅広い炭素数の脂肪酸が含まれますが、大きく3つに分かられます(図3)。
図2 乳脂肪中の脂肪類内訳
デノボ脂肪酸
C16以下の脂肪酸をデノボ脂肪酸と呼びます。
デノボとはラテン語で「新たに」という意味です。この脂肪酸は、ルーメン発酵の結果できる「酢酸」や「酪酸」を供給源に乳腺細胞で新たに作られるため、デノボ脂肪酸と名付けられています。
プレフォーム脂肪酸
C18以上の脂肪酸は、乳腺で作られない既成の脂肪酸で、あらかじめ作られているという意味から「プレフォーム」と名付けられています。この脂肪酸は「エサに含まれる脂肪」と「乳牛自身が蓄えていた体脂肪」の2つの由来があります。
ミックス脂肪酸
C16の脂肪酸は、デノボ脂肪酸とプレフォーム脂肪酸両方に含まれる脂肪酸で、どちらにも含まれるという意味から「ミックス」と名付けられています。
脂肪酸組成の指標値
脂肪酸組成の指標値は表1のとおりです。乳中に占める割合はMilk、脂肪酸に占める割合はFAと表記されています。
表1 脂肪酸組成の組織
デノボFAが低いとき
デノボFAが高ければ、ルーメン微生物が活発な証拠で、その農場の栄養管理やカウコンフォートは良好といえます。反対に、デノボFAが低い場合は、飼養管理にまだ改善の余地があります。
プレフォームFAが高いとき
飼料中の脂肪濃度が低く、プレフォームFAが高ければ、牛は身を削って乳性産していることになるので、エネルギー不足が疑われます。
特に分娩後60日以内は、体力消耗や乾物摂取量が低下しやすい時期なので、注意が必要です。
最後に
デノボ脂肪酸は牛の健康状態を示す1つの指標となりますが、牛の状態は総合的に判断する必要があります。
(令和3年7月作成)
この情報は釧路中西部支所が令和3年9月に地域の農業者に発出するものです。