良い繁殖は良いBCSから
BCS(ボディコンディションスコア)とは、牛の肉付き度合いを数値化したものであり、牛の栄養状態を確認する指標となります。
今回は、BCSと繁殖の関係について、普及センターが調査した結果を報告します。
BCSと周産期疾病
乾乳と分娩期のBCSごとに、分娩後の周産期疾病の発生について調査したところ、BCSが高く(過肥に)なるほど周産期疾病の発生率が高くなることがわかりました(図1)。
過肥での分娩は、適正な分娩予後(乾物摂取量の充足等)を行わなければ、分娩後にBCSが大きく低下する恐れがあります。この急激な痩せが周産期疾病の発生、空胎日数の遅延に繋がると考えられるため、乾乳期前にBCSを3.75以上にしないことが重要です。
図1 乾乳・分娩期におけるBCS別周産期疾病の発生状況(n=287)
BCSと空胎日数
分娩時のBCSごとに、空胎日数の関係を調査したところ、BCSが低い(削痩)牛で特に、空胎日数の遅延が見られました(図2)。
牛の栄養配分の優先順位は、生体の維持が最優先であり、繁殖機能へは、体に必要十分な脂肪が蓄積されてくることで初めて配分されます。
そのため痩せた牛では、繁殖に回せるだけの栄養を保持できていないため、「受胎しない」、「発情が来ない」等が発生し、空胎日数の遅延が起きてしまうと考えられます。
BCS4.0で空胎日数が短い原因については、分娩後に周産期疾病が発生、除籍されたため繁殖成績に反映されていない可能性もあります。
図2 分娩時のBCS別空胎日数(n=250)
BCSを活用した飼養管理
BCSの適正範囲は、泌乳ステージごとに異なり、過肥や削痩状態になると、周産期疾病や受胎率の低下を招くリスクが高くなります(図3)。
図3 泌乳ステージごとのBCS適正範囲
周産期疾病の発生や繁殖成績の悪化を抑えるためにも、BCSを確認し、痩せすぎず太りすぎない、乳期にあった飼料給与を実施することが重要です。
空胎日数が1日延長すると、約2千6百円/頭の損失があると言われています(*)。
損失を防ぐためにも、
(1)受胎後はBCSを確認し、乾乳までに3.25~3.5を目指し調整
(2)乾乳期~分娩までは、BCSを変動させない
(3)乾乳期から分娩後は、乾物摂取量を確保し、周産期疾病を予防
これらのことに注意しながら、飼養管理を行い、牛も、経営も、健康的にしていきましょう。
*乳検情報誌活用誌G1vol.1(平成17年6月(社)北海道酪農検定検査協会)を参考に単価を改訂
(令和3年3月作成)
この情報は、2021年4月に本所が地域(弟子屈町・標茶町)の農業者向けに発出したものです。