家畜衛生管理をもう一度考えてみましょう
夏の暑さが収まり、家畜の感染症等の発生が釧路管内でも散見されています。
今一度牧場の衛生管理について確認をしてみましょう。
防除の考え方は
- 牧場に持ちこまない
- 牧場内で広めない
- 牧場の外へ持ち出さない
です。
この3点に注意して取り組んでみましょう。
ゾーニング
ゾーニングとはある空間を用途に応じて分離することです。
牧場においては防疫の観点から衛生管理区域と清潔区域に分けます。衛生管理区域は牛の飼養エリア、清潔区域は人の居住エリアを指します。
牧場におけるゾーニングの考え方では牛舎への出入り口を限定します。自宅への来訪者と作業者の出入り口は分けることが理想です。分けられない場合には牛舎で使用する長靴やつなぎなどを家に持ち込まないようにしましょう。
衛生管理区域への立ち入り
衛生管理区域には、関係者以外の立ち入りを制限します。衛生区域内に立ち入る場合には、以下のことに留意するとともに外来者にも周知しましょう。
- 畜舎内への出入りの時には、手指の洗浄消毒を行う。
- 畜舎専用の靴、衣服を着用する。外来者用の靴が準備できない場合は、靴の洗浄・消毒を徹底する。(踏み込み消毒槽の利用)
- 外来者の家畜への接触は最小限となるようにする。
写真1(衛生管理区域の出入り口にて靴を履き替える農場)
消毒薬の特徴
よく見受けられる消石灰と複合次亜塩素酸系消毒薬について以下の点に注意してみましょう。
消石灰
- 石灰帯にはすき間無く、タイヤ1周分(6m程度)敷きましょう。
- 粉のままでは効果がありません。(液体と混ざることでアルカリ性による効果が出ます)。
- 石灰帯上に逆性石けん(製品名:パコマ、クリアキルなど)を薄めた液(500倍希釈)をまくことで効果が増します。
複合次亜塩素酸系消毒薬(アンテック ビルコンSなど)
- 塩素系であるため他の消毒薬と混ざることで有毒ガスが発生することがあります。他の消毒薬とは混ぜないようにしましょう。
- 熱湯に溶かすと効力が落ちてしまいます。水かぬるま湯(40℃程度)で希釈しましょう
- 酸性であるため石灰が付着した状態で踏み込み槽に漬けると中和され効力がなくなってしまいます。石灰帯を通ってから踏み込み槽を通る導線の場合は別の薬剤(逆性石けんなど)を使用しましょう。
- 有機物が混ざっても効力が落ちてしまいます。長靴のこすり洗いをしてから踏み込み槽に入るようにしましょう。
サルモネラ | ヨーネ病 | 糞尿混入 | 金属腐食耐性 | |
---|---|---|---|---|
逆性石けん (パコマ、クリアキル等) | 〇 | × | × | 〇 |
塩素系イソシアヌル酸塩 (クレンテ) | 〇 | 〇 | × | × |
複合次亜塩素酸系 (ビルコンS) | 〇 | × | × | × |
消石灰 | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
厳寒期でも菌は動くので引き続き衛生管理に努めましょう。
この情報は本所が地域の農業者に向けて令和3年11月に発出したものです。
参考文献
酪農企画シベチャ 久保田学
2021年4月しべちゃ町農業女性カレッジ資料
「菌とウイルスから子牛と家族を守ろう」