釧路管内では、令和4年度に牛サルモネラ症の発生が急増しました(図1)。
今回は、牛サルモネラ症とその対策について紹介します。
図1釧路管内サルモネラ対策戸数の推移(釧路家畜健康保健衛生所号外第3版より)
1牛サルモネラ症とは
サルモネラ症は、牛では3種類の血清型が届出伝染病となっており、ヒトにも感染する食中毒の原因菌です。
農場で発生してしまうと、経済的損失をもたらすだけでなく、終息までに数ヵ月を要し、肉体的・精神的にも大きく負担がかかります。
(1)症状
子牛では下痢、発熱、食欲減退、妊娠牛では流産などを引き起こし、重症化すると死に至ります。
(2)感染経路
農場内の主な感染経路は、保菌牛の糞便中に排出された菌の経口感染ですが、農場間の感染経路は、野生動物や関係車両などによる伝播が考えられます。
2対策
日頃から農場の防疫を徹底することが重要です。病原体を農場内に持ち込まない、広げないための対策を紹介します。
(1)石灰消毒帯の設置
農場の出入り口に、石灰消毒帯をつくりましょう。
自動車の幅およびタイヤ1回転分の長さを満たすには、幅3m×長さ4mの大きさが必要です。
(2)踏み込み消毒槽の設置
牛舎出入り口に、踏み込み消毒槽を設置しましょう。
注意点は以下のとおりです。
①消毒効果を高めるため、水で汚れを落としてから消毒する(写真1)。
写真1水で汚れを落としてから消毒
②アルカリ性(消石灰など)と酸性の消毒剤が混ざると、中和されて消毒効果が失われてしまいます。牛舎出入り口で使う消毒剤は統一しましょう。
(3)野生動物の侵入防止
カラス、スズメ、ネズミなどの野生動物の保菌も確認されています。
牛舎出入り口に防鳥ネットの設置(写真2)や牛舎内に隠れられる場所を作らないよう、整理整頓を行いましょう。
写真2防鳥ネットで トリの侵入を防止
(4)子牛飼養スペースの消毒
カーフハッチやペン、群飼養スペースなどから子牛を移動させる際には、洗浄・消毒してから次の子牛を導入しましょう(写真3)。
写真3石灰塗布してから子牛を導入
(5)牛の体調管理
ルーメンアシドーシスによるルーメン発酵異常状態では、糞便中の排菌量が多くなるとの報告もあります。濃厚飼料給与量が過多になっていないか、給与飼料を見直しましょう。
また、免疫力が低下しやすい夏期から秋期に多く発生する傾向があります。ストレスの少ない飼養管理を心がけましょう。
おわりに
今回紹介した対策は、よく目にする基本的なことばかりだと思います。しかし、発生してから対策を始めても手遅れです。
ぜひ、実施してみてください。
この情報は2023年2月に地域(釧路市、白糠町、鶴居村)の農業者向けに発出した技術情報です。