農作業安全

農作業死亡事故件数は近年減少傾向にありますが、農業者10万人あたりの死亡事故件数は16.7件と増加傾向にあります。畜産現場における死亡事故件数は年間1~4件と少ないものの、家畜による負傷事故は北海道でも年間700件前後発生しています。そのうち80%以上が牛が関わるものとなっています。

1牛が関わる事故の概要

繋留式牛舎では搾乳時、フリーストール・フリーバーン牛舎や肉牛肥育では牛の移動時に多発していて、「蹴られたり」「踏まれたり」「頭突かれたり」「柵との間に挟まれたり」して、骨折や靱帯断裂により数ヶ月の入院を要する事例もあります。

イラスト

2牛の特性

○温厚で扱いやすい習性
○我慢強く感情を表に出さない
○日常と違う環境や状態に不安を感じる
○好奇心旺盛
○臆病で警戒心が強い
○集団行動を好む

3牛の特徴

○牛は音に敏感で、特にかん高い音(声)に反応します。音だけではなく、日常と違う気配を感じたときや慣れない環境に置かれたときは、耳を立てて動かす行動をとります。
○牛の視野は310度あり、両座骨端から後ろの50度は死角になります。死角の位置から急に近づくと牛は驚き、急に足を上げたり転倒することがあります。
○牛の体の中でその時の感情(状況)を表現している部位が尾です。リラックスした状態では尾はダランと垂れた状態です。驚いたり、寒さを感じたり、体調が悪いときは尾を牛体に巻き付ける仕草を見せます。相手に対する威嚇や興奮状態(発情中も含む)では尾に力が入り跳ね上げた状態になります。また、尾は死角のセンサーの役割と同時にフラストレーションの表現をしていて、ハエのストレス、飼槽に餌がない、普段給餌・搾乳される時間にされない(日常の生活リズムが崩れたとき)、牛舎環境の悪化・暑熱、警戒している人が近づいてきたときは、尾を振ってフラストレーションを表現します。

4牛が警戒する人間の行動

○牛舎内や牛の側で急に大きな音(声)をたてる(出す)。
○牛の追い込みや移動の時は、手や体を素早く動かしたり、走って追いかける。
○牛の死角となる場所から近づく。
○いきなり近づき牛の後肢側方に立つ。
○叩いたり、蹴ったり、牛に対して痛みを与える。
○それまで未経験の環境(フリーストール・フリーバーン→繋留、搾乳、飲水器具、カウトレーナー)への馴致なしでの環境変化。

5牛に対する接し方

牛は臆病な動物です。そんな牛と接する人間側が意識して行動しなければなりません。牛と接していく上で人間側が守っていくべき項目は次の通りです。
○かん高い大きな音を立てない
○牛に痛みを与えない
○死角から静かに近づかない
○牛の後肢側面に立たない
○牛に近づくのを伝える
○いきなり牛体に触れない

6最後に

飼養している牛の個体の性格まで把握している酪農家の皆さんにとっては、あまりにも常識的なことですが、法人の従業員など初めて牛と接する人は理解していないケースが多くあります。 牛の特性・特徴を理解して、普段から牛とのスキンシップをとり、良好な関係を構築し、牛のストレス軽減を図ることで、事故の発生の減少や作業効率の改善につながります。
穏やかな気持ちで牛と接して、事故のない生産活動を継続しましょう。

(この情報は2022年5月に地域(釧路市、白糠町および鶴居村)の農業者向けに発信した技術情報です)

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