昨今の飼料、肥料等の各種農業資材の高騰の流れは、燃油、電気代など、自分たちの生活環境にも影響を身近に感じる値上げの嵐で、経営者にとっては耐えがたい状況となっています。今日のような情勢を乗り越えるには、農場の現状を再把握したうえで、飼養管理の基礎技術の見直しによるロスの排除が必要です。
削減すると良くない部分
飼料や肥料が大幅に値上がりし、やむを得ず、「少しずつエサや肥料を削らざるを得ない・・・」、と考える経営者もいるでしょう。
しかし、飼料や肥料の一律的な削減は、乳牛の体調維持、繁殖機能維持に影響を及ぼし、経営環境が上向いた時に、それまでの状態に回復するには時間を要します。
また、草地も牧草優占度が悪化することで、その後の収量性が低下し、良質な粗飼料確保に影響が出ます。
①飼料給与銘柄の見直し検討
まずは泌乳ステージ((栄養要求量)に見合った飼料給与が大前提ですが、成分量が大きく変わらず、単価の安い配合飼料への変更が可能かどうか、営業担当者に相談してみましょう。
②草地の土壌分析の実施
当地域における土壌分析結果によると、リン酸やカリ成分は8割以上のほ場が基準値以上(減肥可能)、石灰は半数以上が不足という傾向が得られています(図1)。
これらのことから、自家草地の土壌分析を実施することにより、土壌成分を把握できれば、もしリン酸やカリ成分が過剰であった場合、減肥対応した銘柄を選定することで、肥料コストを少しでも低減できる可能性があります。
数年前までの土壌分析結果であれば有効です。土壌分析を実施したうえで、結果に基づいた適正施肥を行なうことが重要です。
日頃の作業見直しで可能なこと
①給水器具類の清掃
水槽、ウォーターカップの清掃頻度を高める、配管の拡大など些細な事でも、乳牛の飲水意欲を向上させ、乳生産量の増加につながります。
綺麗なウォーターカップで飲水量アップ⇒乳量アップ!
給水器(水槽)の清潔度は生産乳量の差に!
②カウコンフォートの向上
敷料の交換頻度を高めたり、ジメジメした牛床環境を改善することで、乳牛の横臥時間が増え、乳牛のストレス緩和と乳生産の向上につながります。
③乳房炎対策
酪農経営の中で、疾病発症数が最も多いのが乳房炎です。
~発症要因の多い事例~
✔牛床の汚れ、敷料の長期連用
✔過搾乳、ミルカー離脱タイミングの遅れ
✔不良発酵した粗飼料の給餌
発生割合が多いと感じる農場では、それぞれの要因に応じた対策を講じることで、診療投薬費の減少、乳代の増加等に直結します。
④飼槽へのアクセス回数を増やす
給餌後、変敗が進行しない早めのうちに飼槽のエサ押しを励行することで、乳牛の摂食意欲を高め、乾物摂取量の増加につながります。
気温の高い日は、朝夕給与量比率を夕方に多く配分することも有効です。
カギは基本技術の積み重ね
クミカンの精算シートや乳検データ等を振り返り、日頃の作業の中で今一度、飼養管理の基本技術を見直し、この難局を乗り切りましょう。
この情報は2022年8月に地域(標茶町、弟子屈町、釧路町)の農業者向けに発出した技術情報です。