石灰質資材散布の勧め
肥料、飼料価格等の資材価格が高騰し、悩むことが多いかと思います。今回は、肥料の効きを良くするための石灰質資材散布についてまとめました。
1 地域の現状
今年度釧路管内A地域にて、採草地の土壌分析を実施しました。結果はリン酸、カリウムの含量は多く、石灰含量は基準値以下が多いことがわかりました(図1)。
図1より、A地域では土壌養分が基準値以上であるため減肥が可能なほ場は多いと推測できますが注意が必要です。pHが低いほ場では減肥すると収量減少に繋がる恐れがあります。
図1土壌分析結果(採草地、38ほ場)
2 pHと牧草収量の関係性
上記調査と同じほ場にて一番草収量調査を実施したところ、土壌pHが高いほど収量が多い傾向にあることがわかりました(図2)。
三大要素である窒素、リン酸、カリウムの吸収はpHが中性に近いほど肥料効率が良い(植物が吸収しやすい)です(図3)。このことから、低pHほ場では土壌中にリン酸やカリウムを基準値以上含有していても、牧草が上手く吸収出来ず収量が少なくなっていることが推測されます。
そのため、基準値以上だからとpHを確認せずに減肥をすると収量が低下してしまう可能性があるので注意しましょう。
図2牧草収量とpHの関係
図3土壌の反応(pH)と肥料要素の溶解・利用度
3 草地への石灰質資材散布量
pH5.5以下のほ場はpHを改良するため必要な量を、pHが5.5~6.0のほ場は現状のpH維持のため炭カルで40kg/10aに相当する量を、それぞれ散布しましょう。2~3年分の一括施用も可能です。
土壌pHは肥料散布、降雨等でも低下します。減肥をする前にまずは土壌分析を行い現状を知り、石灰質資材散布を検討しましょう。
pH | ~5.5 | 5.5~6.0 | 6.0~ |
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維持管理 | 0~5cm土層のpHを6.0に改良するのに必要な量 | 40kg/10a/年 (pH現状維持のための必要量) | 不要 |
完全更新 (表層攪拌法含む) | 0~15cm土層をpHを6.0~6.5に矯正する 石灰質資材を土壌と混和する。 | 左に同じ | 左に同じ |
簡易更新(作溝法・部分耕転法・穿孔法) | 0~5cm土層をpHを6.0~6.5に矯正する 石灰質資材を表面施用する。 | 左に同じ | 左に同じ |
表1炭カルの散布量(北海道施肥ガイド2020)
この情報は2022年11月に地域(弟子屈町、標茶町)の農業者向けに発出した技術情報です。