よく寝る牛は乳量アップ

 飼料代等の高騰により、以前に増して費用を掛けずに効率良く乳生産する必要があります。

 今回は、横臥休息(寝る)に着目した飼養環境改善を紹介します。

牛の横臥休息の必要性

 図1は牛の1日の行動時間を示したものです。注目すべき点は、横臥休息(横臥反芻を含む)の時間が最も長いことです。

横臥休息時間は12時間以上占めていることが理想。

図1牛の1日の行動(デイリー・ジャパン社「牛は訴えている」重引および改変)

 牛は横臥休息によって、乳生産が行われる乳腺細胞への血流量が増加することで、乳量が向上するといわれています。そのため、横臥休息時間が確保されることは重要となります。

 他にも、蹄への負担軽減や反芻増加による消化効率の向上によって、乾物摂取量の増大に繋がるなど、横臥休息時間の増加は、牛にも管理者にも良い影響をもたらします。そのため、管理者は牛が横臥しやすい環境整備を行うことが必要です。

横臥休息の評価

 牛が横臥しやすい環境かを評価する方法の一つに「牛床横臥率」があります。

 牛床横臥率は、最も横臥休息行動が見られる給餌2時間後に牛群を観察します。観察した全頭数のうち、牛床で横臥していた頭数の割合で評価します。この割合が70%未満であれば、環境改善が必要です(表1)。

牛床横臥率が70%以下であれば、牛床環境を改善する必要がある。

表1牛床横臥率とその評価(酪農試験場堂腰研究員の資料引用)

 牛は横臥すると1~2時間毎に寝返りのため起立しますが、蹄の悪い牛はなかなか起立動作が行えず、床ずれ、飛節の腫れおよび過度な牛体汚れ等を招きます。そのため、横臥休息行動と共に牛体の確認も必要です。

横臥しない要因と対策

(1)牛床構造の改善

①横臥した際、顔の前に障害物がある場合、横臥を諦める、もしくは無理な体勢での起立横臥により牛体を傷つけてしまう。スムーズな起立横臥を促すため、障害物は撤去する(写真1)。

横臥した際の顔面に障害物があると起立横臥しづらいため、障害物を撤去する必要がある。

写真1障害物の撤去(根室生産農業協同組合連合会「乳牛の行動から考える牛舎施設」引用)

②チェーンが極端に短い場合、牛体に応じて100cm以上にする(写真2)。

繋留のチェーンが短い場合、長くする必要がある。

写真2チェーンの延長(根室生産農業協同組合連合会「乳牛の行動から考える牛舎施設」引用)

 チェーンの延長によって、もしくは日常的に斜め横臥が見られる場合(写真3)は、防止策として隔柵の設置が最善であると共に、次項の対策も必要となる。

斜め横臥の影響で横臥出来ない牛が出てくる。

写真3斜め横臥の影響(根室生産農業協同組合連合会「乳牛の行動から考える牛舎施設」引用)

(2)牛床管理の改善

①濡れた場所を避けて横臥するため、乾燥を維持する。

②敷料を多めに敷く。

③ゴムマットの劣化による、硬化や浮き上がり等ある場合は、ゴムマットを交換する。

おわりに

 資材高騰により新たな投資に踏み切れない時期こそ、管理者は先を見越した投資の見極めが求められます。

 普段見過ごしていたことを今一度見直し、出来ることから環境を改善することで、効率的な乳生産を実践していきましょう。

この情報は2022年11月に地域(釧路市、白糠町、鶴居村)の農業者向けに発出した技術情報です。

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