タンチョウと共生する

道東に多く生息する特別天然記念物のタンチョウは保護活動の結果、約1800羽まで回復しました。しかし、その一方で農業被害の声も聞かれます。

今回は、タンチョウによる農業被害の軽減に向けた対策について紹介します。

タンチョウによる被害

飼料作物への被害

・飼料用とうもろこし(以下コーン)のは種後、種子を食べる
・サイレージのシートやラップを突いて穴を開ける

給餌や牛への被害

・牛舎まで侵入して飼槽のエサを採食し、飼槽の周りに糞を落とす
・牛がタンチョウに驚き、足を滑らせて怪我をする

対策のポイント

タンチョウは特別天然記念物ですが、殺傷を伴わなければ防除が可能です。そこで、次の2つのポイントを抑えた上で対策を検討しましょう。

早期に対策を行う

タンチョウは遠くから安全を確認した上で、段階的に牛舎へと近づきます(図1)。そのため、牛舎へ侵入する前から対策を打ち、牧場や畑が安全な場所と認識させないように迅速な対応が大切です。

図1タンチョウの侵入経路

対策に順応させない

タンチョウはカラスと同様に同じ対策を継続すると、慣れが生じ、効果が軽減してしまいます。そのため、様々な対策を講じて効果の持続を図りましょう。

対策方法

追い払う

爆音機などの音や鳥の模型などで追い払います。ただし、一度追い払っても、再び戻ってくることがあるため、一時的な追い払いで終わらないことが重要です。

物理的に侵入させない

防鳥ネット、チェーンなどを牛舎の扉や窓に設置し、侵入を防ぎましょう。他の野鳥や野生動物の侵入防止にもなるため、感染症対策にも繋がります。

誘引要因を取り除く

次の要因を取り除き、タンチョウを農場に寄せつけない環境作りを行いましょう。

(1)舎外の給餌方法の変更

事例として、牛への給餌をタンチョウが行動しない時間帯に変えたり、濃厚飼料をマッシュ状に変更するなどがあります。飼槽の状況、牛およびタンチョウの行動を観察し、盗食対策を検討しましょう(写真1)。

写真1盗食対策にネットを活用

(2)コーンは種時の注意点

は種時は、種子が地表に出ないように覆土を行いましょう。余った種子は畑に散乱したまま放置しないようにしましょう。

(3)コーンサイレージの扱い

使用中のサイロのサイレージ開口部は、取り出す毎にシートなどで閉めましょう。また、サイレージシートが突かれて破損することを防止するため、シートの上から防鳥ネットや土を掛けるようにしましょう(写真2)。サイレージの二次発酵の防止に繋がります。

写真2サイレージシートの突かれ防止

(4)コーン収穫後の耕起

コーンの収穫残渣を狙った飛来を防ぐため、早めに耕すよう心がけましょう。

おわりに

タンチョウの被害軽減に関する資料が環境省のHPに掲載されています。

タンチョウの誘引要因の排除や侵入防止対策に取り組み、地域全体で農業被害の軽減と共生を図っていきましょう。

この情報は2023年3月に地域(釧路市、白糠町、鶴居村)の農業者向けに発出した技術情報です。

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