バルク乳旬報や乳牛検定成績に記載されている、皆さんご存じ「MUN」について、活用法を再確認していきます。
MUNとは
乳牛が摂取した飼料中のタンパク質(分解性タンパク質)は、ルーメン内で微生物により分解され、アンモニアとなり、微生物タンパク質に合成されます。このとき、過剰なアンモニアは、血中に取り込まれ、肝臓で尿素に変換されます。この尿素が乳中に排出されたものが乳中尿素(態)窒素(MUN)と呼ばれます(図1)。
図1 MUNの合成経路
数値的意味
MUNは乳タンパク質との関係性が強いため、両方を同時に見ることで、「給与した飼料中のタンパク質(分解性タンパク質)とエネルギー(糖・デンプン)の摂取量が適切か」を判断することができます(表1)。表1を参考に、栄養バランスの状況を再確認してみましょう。
表1 MUNと乳タンパク質の関係
適正範囲外の状態で長期間放置しておくと乳牛の肝臓に障害をもたらし、様々な疾病が発生するため、後述する対策を参考にしてみてください。
各栄養状態での対策
① エネルギー不足・タンパク質過剰の場合
分解性タンパク質含量の高いグラスサレージ類を減らし、エネルギー含量の高いコーンサイレージや濃厚飼料を増給する。
② タンパク質が過剰の場合
タンパク質含量の高い飼料を減らし、エネルギー含量の高い飼料を給与する。
③ エネルギー・タンパク質が過剰の場合
ボディコンディションを確認し、痩せていなければタンパク質飼料と濃厚飼料の給与量を再考する。粗飼料割合を増やす。
④ エネルギー不足の場合
コーンサイレージなどの糖やデンプン含量が高く、タンパク質含量が低い粗飼料を増給する。飼料設計上、粗飼料が足りている時は濃厚飼料を増給する。
⑤ エネルギー過剰の場合
濃厚飼料給与量を減らし、粗飼料とのバランスを再考する。
⑥ エネルギー・タンパク質が不足の場合
良質粗飼料を給与し、濃厚飼料を増給する。
⑦ タンパク質が不足の場合
タンパク質含量の高い粗飼料や濃厚飼料を増給する。
⑧ エネルギー過剰・タンパク質が不足の場合
タンパク質含量の高い粗飼料を増給し、濃厚飼料を減給する。
注意すること
対策を実施する際は、グラスサイレージなどの自給飼料を分析し、分解性タンパク質の割合を把握しておきましょう。また、分析値を利用し飼料設計を正しく行っても、牛が必要量を摂取していないと効果がありません。
牛の採食行動を確認し、選び食いの有無や残飼量が増えていないかなど、確認しましょう。
写真1 採食行動を確認!
最後に
今回取り上げたMUN値はあくまで指標の1つです。乳牛の行動やボディコンディション、乳量など様々な要因を総合的に判断して、よりよい酪農経営に繋げていきましょう。
(この情報は2023年6月に釧路市、白糠町および鶴居村の農業者向けに発信した技術情報です)