発酵初乳について

発酵初乳について

哺乳期の子牛は免疫機能が低いために下痢を発症・重症化しやすく、子牛の成育・健康を害することで経済的な損失を招きます。対策の一つに、発酵乳の給与が挙げられます。ここでは、移行乳を原料とする発酵初乳について紹介します。

発酵初乳の利点、注意点

分娩後、出荷ができるようになるまでに泌乳される移行乳から発酵初乳を作ることは、余剰分の活用に直結します。、加えて発酵させることによって、室温での貯蔵を可能にする、下痢を発症しにくいなどの利点があります。
北海道農業試験場(1979)の研究の結果からは、発酵初乳の嗜好性は代用乳と比較してやや低いものの、下痢症状の抑制に効果があることが示唆されています。

発酵初乳給与区では29頭中8頭、代用乳給与区では13頭中8頭が下痢を発症

図1_下痢の発生状況

福島県畜産試験場の研究(2005)では、発酵初乳を給与したことで離乳までの代用乳と人工乳の消費が抑えられ、費用が低くなったこと、栄養の充足、発育に問題が無かったことが報告されています。
一方、温度や衛生面の管理、毎日の攪拌作業などの手間を要します。

発酵初乳の作成

作成の手順

清潔にしたフタ付きのプラスチック容器に初乳を入れ、必要に応じて種菌となるプレーンヨーグルトや乳酸菌入りの製剤を加えます。衛生的かつ直射日光の当たらない室内で貯蔵し、1日1~2回攪拌します。容器の内壁に付着したものはカビの元となるので、拭き取るなどの対処が必要です。

発酵時の様子

貯蔵を開始し発酵が進むにつれpHが低下していき、4.4~4.3あたりで一旦低下が止まります。

貯蔵の3日目頃からpHが低下し、その後pHが4.5から4.0あたりでとどまっている

図2_pHの推移

この時、ヨーグルトのような匂いと、とろみを呈するようになり、子牛への給与に適した状態となります。さらに発酵が進むと乳清が分離し、沈殿物が生じます。この段階になると、腐敗臭を発する腐敗状態となり、廃棄が必要です。

貯蔵時の温度

貯蔵時の外部温度によって発酵の速度が異なり、品質や貯蔵性に影響を及ぼします。最適な温度は10~20℃とされています。25℃を超えると発酵が急速に進み、発酵乳として利用できる段階を通り越してすぐに腐敗します。反対に10℃を下回ると発酵が滞るため、温かい場所で保管するなど加温の工夫が必要になります。

保存期間

保存期間は30~40日ですが、夏場の高温時は14日が限度です。

発酵初乳の給与方法

発酵初乳はそのままでも給与が可能ですが、哺乳方法によって給与しづらい場合は発酵初乳2~3に対してお湯1で薄めて給与します。

その他の留意点

貯蔵している発酵初乳は消費した分、原料乳を継ぎ足すことも可能です。その際、長期間連続して継ぎ足すと不良発酵を招くおそれがあるので、6日間を限度にしましょう。
抗生物質による治療を受けた牛の生乳や血乳も不良発酵を起こしやすいので使用を避けます。

おわりに

発酵乳の管理は複雑に思われますが、子牛の健全な成育、費用の削減など農場の経営によい効果が期待できますので、ぜひ一度ご検討ください。

この情報は(音別町、白糠町、鶴居村)の農業者向けに発出した技術情報です

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