経産牛(成牛)の寒冷対策について~施設管理編~

今年の猛暑により暑熱対策が注目されていますが、寒冷ストレスも乳牛の生産性を低下させる要因となります。
寒冷対策は育成牛で重視されがちですが、今回は経産牛(成牛)の寒さ対策について考えてみたいと思います。

1寒さの影響

乳牛は寒さに強く、暑さに弱い動物ですが、成牛の適温域は0~20℃、生産性を落とさない下限温度は-15℃と言われています。釧路市では-20℃近くまで気温が低下する日もあることから(図1)、釧路管内の冬季は乳牛にとっても厳しい期間であることがうかがえます。

釧路市の最低気温の推移グラフ

図1釧路市の最低気温の推移(アメダスより)

2環境対策

施設管理面からの寒冷対策を3つ紹介します。

①牛床管理の徹底

牛も人と同じで、冷たいものに触れると熱が伝導し、体温が奪われます。そのため、牛が直接触れる牛床の管理が重要です。
牛床マットを敷いていれば、熱伝導はある程度抑えられますが、敷料は必須です。空気を含んでいる敷料は、断熱効果が高く、牛床が濡れていても多少は被毛の乾燥を守ってくれます。
しかし、敷料が糞尿で汚れて濡れていたり、糞尿が牛体に付着してヨロイとなってしまうと、敷料と被毛の断熱効果がなくなってしまいます。敷料を清潔にして、ブラシがけなどにより牛体をきれいに保ちましょう(写真1)。

綺麗な敷料の写真

写真1敷料を必ず敷き牛体をきれいに保つ

②空気の対流(換気の実施)

冬季は牛の体温が奪われない程度に換気する必要があります。換気が不十分だと、牛から排出される二酸化炭素やアンモニアガス、水分などが畜舎内で対流し、牛の疾病のもととなる結露の発生を招きます。
冬だからといって、牛舎を閉め切らず、暖かい日の日中は窓を開放する、回転数を下げて換気扇を回すなど寒冷対策と換気の両立を図りましょう。

③日差しの輻射の活用

冬季の牛舎内の温度低下を防ぐために、日差しの活用が有効です。特に分娩前後の牛は、分娩自体が大きなストレスとなり、さらに寒冷ストレスが加わると、分娩後乳量の低下を招くため、日向ぼっこさせたいです。可能であれば、牛舎内の日当たりの良い場所に分娩の近い牛を移動させましょう。
今の酪農情勢から取り組むことは難しいですが、分娩房を併設した乾乳牛舎に日差しを取り込むため、牛舎屋根の一部や妻面に透明資材(ポリカーボーネート樹脂)を選択した事例があります(写真2)。この農場の方は、日差しが入ることで、冬でも明るく暖かく、作業もしやすいと話していました。ちなみに夏季はカーテンを全開にして、牛舎の温度上昇を防いでいます。

明るい牛舎の写真

写真2透明資材の使用により牛舎が明るく暖かい

おわりに

本稿をきっかけに今年の冬の飼養管理について、改めて考えるきっかけになると幸いです。

この情報は釧路市、白糠町、鶴居村の農業者向けに発出した技術情報です。

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