今回は泌乳牛のルーメンアシドーシスについて紹介します。
1 ルーメンアシドーシスとは
ルーメンアシドーシスとは、ルーメンのpHが低下した状態を指し、臨床症状を伴わないものは潜在性アシドーシスと呼びます。要因には、ルーメン内に生息する微生物が関わっています。ルーメン内では、微生物が繊維・デンプン・糖を分解しており、このうちデンプン・糖を分解する菌ばかりが増えてしまうと、ルーメンのpHが低下してしまいます。
ルーメンアシドーシスとなった牛は、食欲不振や肝臓疾患、蹄葉炎になるため、早期に発見し、対処する必要があります。
2 ルーメンアシドーシスを見つけるサイン
現場でルーメンpHを計測するのは現実的ではないので、牛が発するルーメンアシドーシスのサインを紹介します。ただし牛には個体差があり、全てのサインを現すわけではないので、総合的に判断する材料としてください。
①蹄の状態
ルーメンpHが低下するとルーメン内の微生物が死滅し、死滅した微生物は毒素を放出します。この毒素によって、血管の末梢で炎症が起こり、蹄冠が腫れたり(写真1)、歩き方が不自然になります。
写真1 蹄冠が腫れる
②乳成分
ルーメンpHが低下すると、乳脂率が低下することが報告されています。前月の乳検より乳脂率が急に低下した牛は、ルーメンアシドーシスの可能性が高いです。
③糞の状態
ルーメンアシドーシスの牛の糞は、気泡で泡立ち、消化されていない穀類や繊維が多く見えます(写真2)。色は黄色がかり、長靴のつま先で踏み伸ばすと、管状の粘膜が見られることもあります。
写真2 糞が緩くなる
④反芻
ルーメンアシドーシスの牛は、反芻時間が短くなります。「短くなっている」という変化に気づくには、普段の反芻状況を捉えておく必要があります。
3 ルーメンアシドーシス対策
ルーメンアシドーシスを防ぐには、デンプン・糖分解菌を過剰に増殖させない、もしくはルーメン内のpHを安定させることがポイントです。そのための飼養管理を紹介します。
○デンプン・糖分解菌の増殖を抑える
濃厚飼料を短期的に大量に摂取すると、デンプン・糖分解菌の増殖が過剰となります。選び食いや特定の時間にエサを一気に食べる固め食いを防ぐことが対策となります。
分離給与であれば、粗飼料を飽食給与し、繊維分解菌をルーメン内で増やすことも重要です。
○ルーメン内のpHを安定させる
ルーメン内のpHを安定させるには、バッファー効果のある唾液の分泌が必要です。唾液の分泌は、どれだけ反芻させられるかが重要となります。牛床を快適に整え、牛をなるべく寝させて、反芻を促しましょう。
また重曹にもバッファー効果があります。採食量が低下しやすい暑熱時など、短期的に給与すると経済的です。
おわりに
ルーメンアシドーシスと判断し、対策を検討する際は、普及センターまでご連絡ください。
この情報は釧路市、白糠町、鶴居村の農業者向けに発出した技術情報です。