牛伝染性リンパ腫について

近年、発生数が増加している牛伝染性リンパ腫(旧牛白血病)と、それを引き起こす牛伝染性リンパ腫ウィルス(旧牛白血病ウィルス)について改善事例を紹介します。

病態と影響について

牛伝染性リンパ腫ウィルスに感染した牛は30%が持続性リンパ球増多症(以下ハイリスク牛)となり、そのハイリスク牛の中から2~5%が牛伝染性リンパ腫を発症します(図1)。
症状がなくても、免疫力が低下し乳房炎に罹患しやすい(図2)他、乳量や繁殖成績が低下するため、経済的損失が計り知れない病気です。

図1 発症フロー.jpg

図1_発症フロー

図2 牛伝染性リンパ腫ウイルス感染と乳房炎.jpg

図2_牛伝染性リンパ腫ウィルス感染と乳房炎

伝播経路と改善事例

牛伝染性リンパ腫ウィルスの伝播は、血液や乳汁・体液を介してウィルスが健康牛の体内に侵入することによって起こります。実際に改善したA農場(フリーストール牛舎)の取り組み事例を紹介します。

①農場内の感染状況を知る

全頭の血液検査でハイリスク牛を把握します。潜伏期間が長いので、半年から1年に1回程度の検査を実施します。

②感染牛を導入しない

牛の導入時や預託先から返却された牛の再導入前に血液検査を実施、感染状況を把握します。

③農場内で拡げない

【分離飼育】

非感染牛、無症状牛、ハイリスク牛で群分けを行い、分離飼育します(図3)。

図3 フリーストール牛舎の群分け例.jpg

図3_フリーストール牛舎の群分け例

【作業順序】

機械や手指を介した牛伝染性リンパ腫ウィルス伝播を防止するため、非感染牛から作業を行います。

【垂直感染】

ハイリスク牛から生まれた子牛は感染リスクが高いため、後継牛として残さないようにします。初乳は非感染牛由来、もしくは60℃で30分間加熱したものや一度完全に凍結したものを給与します。

【直腸検査・除角・削蹄・注射】

注射針や直検手袋を使い回さず、1頭ずつ必ず交換します。また、削蹄や除角で使用する器具を1頭ごとに消毒します。出血を伴う処置であれば、確実に止血を行います。

【吸血昆虫対策】

牛伝染性リンパ腫ウィルス感染牛の血液を吸血した吸血昆虫が、非感染牛を続けて吸血し伝播します。吸血昆虫の発生時期に牛舎周囲に防虫ネットやアブトラップの設置、牛にプアオン剤の塗布や耳標タイプの忌避剤を装着します。また、吸血昆虫の発生場所に昆虫成長抑制剤を散布します。

【改善結果】

これらの取り組みの結果、A農場は規模拡大したにも関わらず、ウィルス陽性率が52.1%から19.6%に減少させることができました(図4)。

図4 陽性率の推移.jpg

図4_陽性率の推移

この情報は2024年3月に地域(鶴居村、白糠町および釧路市音別町)の農業者向けに発出した技術情報です。

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