早春施肥の考え方

1. 牧草の萌芽

早春、気温が上昇すると、多年生牧草の越冬した芽は萌芽により生育を開始し、新しい茎葉が出現します。遠目から見ると枯草ばかりに見えても、萌芽の時期に草地を歩いてみると新しい茎葉が生育を開始しています(写真1)。
釧路北部地域の萌芽期は、表1の通りです。

写真1.萌芽して展開した新葉

写真1.萌芽して展開した新葉

表1.釧路北部地区の萌芽期

表1.釧路北部地区の萌芽期

2.萌芽後の生育

萌芽初期の牧草の生育は、越冬前に貯蔵した養分を使います。新葉が展開して栄養生長期に入ると、光合成と根からの養分吸収により生育します。チモシーは、この期間に穂が出る茎(有穂茎)の数が増えることで収量を増加させるため、十分な養分が必要です。

3.施肥時期は?

早春施肥は萌芽に近い時期が望ましいため、融雪後、トラクタが草地に入っても牧草を傷つけない程度にほ場が乾いたら、速やかに行いましょう。
図1は、施肥時期を萌芽に合わせ早めたほ場と遅くなったほ場による1番草の収量差です。チモシーは年間収量の約7割を1番草が占めます。萌芽に合わせた施肥で、今年の牧草収量を確保しましょう。
施肥作業は、「どこに撒いたか分からないので牧草が伸びてから」という声も聞かれますが、近年はGPS(GNSS)ガイダンスシステムの導入により、タイヤ痕がつかなくても正確な作業が可能となりました。手持ちのスマートフォンやタブレットと、市販のGPSアンテナによる比較的安価なガイダンスシステムもあります。

図1.施肥時期の変化による1番草収量差(R4、5年,普及センター調査)

図1.施肥時期の変化による1番草収量差(R4、5年,普及センター調査)

4.糞尿散布は?

春にスラリーを散布する場合も、早期に行う必要があります。理由は、①肥効を高めて収量を確保する、②スラリーが牧草の茎葉に付着することによる発酵品質低下を防ぐ、の二点です。5月上旬までを目安に、散布を終えましょう。

5.施肥量

チモシー年2回収穫の場合、年間施肥量を早春:1番草収穫後=2:1に分けて施用します。基準収量4,500~5,000㎏/10aの年間施用量は表2の通りです。
有機物を活用した減肥、土壌診断に応じた施肥など、ぜひご相談ください。

表2.道東におけるチモシー採草地の維持管理時の施肥標準量(北海道施肥ガイド2020)

表2.道東におけるチモシー採草地の維持管理時の施肥標準量(北海道施肥ガイド2020)

この情報は2024年4月に地域(標茶町、弟子屈町、釧路町)の農業者向けに発出した技術情報です。

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