飲水量を確保する
泌乳牛は1日に約100ℓの水を飲みます。暑熱時は発汗や呼吸数の増加により水分損失が増えるため、飲水量はさらに増えます。
水槽の数を増やしたり、掃除をこまめにおこなったりすることで、新鮮な水がいつでもたくさん飲めるようにしましょう。放牧地の水槽も、水量が足りているか、毎日確認し、清潔に保ちしましょう。
写真1 臨時的に水槽を増設
成牛の飲水速度は1分あたり18ℓであることから、ウォーターカップの吐水量は1分あたり20ℓ以上であることが望ましいです。吐水量が不足する場合は、配管を太くするなどの取り組みも有効です。
写真2 吐水量確保のために配管を太くした事例
粗飼料の摂取量を確保する
粗飼料の摂取量が減少すると、採食や反芻に伴う唾液の分泌が少なくなります。また、相対的に濃厚飼料の採食割合が多くなるため、アシドーシスを起こしやすくなります。
①飼槽管理のポイント
飼槽での二次発酵を防ぐために、残飼は毎日片付け、飼槽を清潔に保ちましょう。TMRの給餌回数や掃き寄せ回数を増やすことや、涼しくなる夜間に給餌量を増やすことも有効です。
②粗飼料選択のポイント
刈り遅れ傾向の粗飼料は、消化が遅く、第一胃内に滞留するため、採食量を低下させ、余分な発酵熱を産生し、体温上昇を招きます。
粗飼料は早刈りの牧草など、消化の良いものや、嗜好性の良いものを給与しましょう。
③サイロ管理のポイント
サイロにおけるグラスサイレージの二次発酵を防ぐために、サイレージ取り出しの際には、空気を内部に入れないように注意しましょう。下からすくい上げずに、上から下へ、削り落とすように取り出したり、サイレージカッターの使用を検討しましょう。
取り出し口には、シートをかけて直射日光が当たらないようにしましょう。夏用のサイロとして、取り出し口が北向きになるサイロや、間口の小さなサイロを計画的に用意するのも有効です。
写真3 鋭利な取り出し面のスタック
バッファー(ルーメン緩衝剤)やミネラル分の給与を行う
暑熱時は、粗飼料摂取量の減少、反芻の減少、かため食いの増加から、アシドーシスが起こりやすくなります。
バッファーとして重曹の給与が有効です。重曹は、搾乳牛に対して自由採食、もしくは1頭あたり150g程度を給与します。乾乳牛への給与は、乳房浮腫のリスクが高まるため、行いません。
また、発汗の増加によって、ナトリウムやカリウムなどのミネラル分の要求量が増えます。固形塩の補充や塩の増給を行いましょう。
この情報は2024年7月に地域(標茶町、弟子屈町、釧路町)の農業者向けに発出した技術情報です。