牛舎は牛も人も多くの時間を過ごす場所です。これから暑くなる季節ですが、いつでも牛舎内を快適に過ごせる状態にすることが大切です。今回は、牛舎の換気について取り上げます。
換気と暑熱対策(送風)の違い
換気と暑熱対策(送風)は混同されやすいですが、目的が異なるため、用途に合わせた使い方が必要です。換気は、牛舎内部の湿気や汚れた空気を外の新鮮な空気と入れ換えるために行います。暑熱対策(送風)は風や空気を送るために行います(図1)。
乳牛は人間よりも汗腺が少なく、暑熱時には呼吸数を増やすことで体内の熱を空気中に逃がします。しかし、これにより逃がせる熱の量は少なく、牛舎内の湿度が高いと牛の体感温度が高まります。暑熱対策では、送風することで牛に風を当て、牛の周りの空気を入れ換えること、送風と換気で空気を出口まで送り、牛舎内の空気を入れ換えることの両方を考える必要があります。
図1 換気と暑熱対策のイメージ
自然換気と強制換気
自然換気は、畜舎内と外の気温差を使って換気するため、夏は開口部を最大にし、多くの風を取り入れられるようにする必要があります。強制換気は、換気扇などの機械を利用して換気するため、外気の影響を受けずに換気量を調節できます。トンネル換気の場合は、妻面の入気口から新鮮な空気を取り入れ、もう一方の妻面の換気扇から排出するため、扉や窓などの隙間風が入らないようにする必要があります(図2)。また、給気口から入ってきた空気の量しか換気扇から排出できないので、給気口の位置や大きさが換気効率に関わります。
図 2 強制換気の空気の流れ
送風の効果
体感温度を下げるためには、牛の体へ風を当てることが有効です。例えば、風速が1m/秒の場合、牛の体感温度を6℃ほど下げることができます(体感温度=気温-6√風速(m/秒))。牛舎内温度が下がる訳ではありませんが、20℃以上になると暑熱ストレスを受け始める牛にとっては重要です。
季節に合わせた換気
暖かくなり始める春、涼しくなり始める秋は牛舎内部と外部の温度差が少なくなり、換気が悪くなりやすい時期です。換気不足は採食量の低下の原因となり、乳量低下や疾病の発生をもたらします。夏以外も牛舎を閉め切らず換気をしましょう。
この情報は2024年7月に地域(浜中町・厚岸町)の農業者向けに発出した技術情報です。