土壌診断は草地に対する「健康診断」です。とくに、生産性の低下を感じる草地は、対策のために土壌診断による実態把握が必要です。最終番草の収穫後は、ぜひ草地の土壌診断を実施しましょう。
1.土壌診断の目的
土壌診断は、生産性向上によるコスト低減を可能にします。土壌の分析値に応じた肥料成分施用量が算出できます(図1)。

図1 土壌診断値に基づく施肥の考え方
適切な草地管理によって牧草割合が高く維持され、雑草は抑制されます。良好な植生を持続することで乾物収量、栄養収量が向上して飼料費削減につながります。
2.土壌サンプルの採取
➀採取量
分析用の土壌サンプルは生土500g程度です。目安として、イチゴパックでおよそ一杯になります(写真1)。

写真1 必要なサンプル量
②採取時期
ほ場に肥料成分が無い状態の時期です。収穫後の追肥やふん尿散布前で、土の状態が安定している凍結・降雪前が推奨されます。
③採取場所
ほ場の端を除き、全体からまんべんなく採取します(図2)。

図2 土壌採取場所の例
④採取する深さ
維持管理草地は表面から5㎝までの層、更新予定草地は、耕起深までの層を採取し、茎葉・根を除きます。
3.診断値の活用
➀土壌㏗を管理する
土壌㏗は、化学肥料の施用や降雨で酸性化が進行し、年々低下しますが、釧路地域は火山灰土壌が多く、酸性化しやすい傾向があります。定期的に土壌㏗をモニターし、施肥効果を最大限にするため㏗6.0を目標に炭カルなど石灰資材を施用しましょう(表1)。

表1 維持管理草地の土壌pH管理
②ふん尿の利活用
ふん尿由来の堆きゅう肥を利用する場合は、施肥による肥料成分量を削減できます。とくにカリ含量が高いので、散布量が多いほ場や施用し続けたほ場は、カリが蓄積する可能性があります。年間散布量で尿は2t(10a当り)、スラリーは貯留状況によるバラツキがありますが、5.5t(10a当り)で牧草の年間要求量に到達します。分析値によっては、カリ無しの銘柄肥料や単肥の組み合わせも選択肢になります。
普及センターでは、診断結果に応じた投入資材の提案を行っています。お気軽にご相談ください。
この情報は2025年11月に地域(弟子屈町・標茶町・釧路町)の農業者向けに発出した技術情報です。

