エゾシカ対策~電気牧柵の下草管理~

近年、エゾシカによる飼料作物の食害が増加しており、電気牧柵を活用したほ場が増えてきました。しかし、電気牧柵設置後の下草管理が不十分なため、エゾシカの侵入があるほ場も散見されます。
今回は、飼料用とうもろこしのほ場を対象とした電気牧柵の下草管理について紹介します。

電気牧柵の仕組み

電気牧柵は動物が触れると電気が動物の体を通り、地面に抜け、アースを通り電源装置へ戻るといった回路が成り立つことで電気刺激を与えます(図1)。

図1電気牧柵の仕組み

図1電気牧柵の仕組み

エゾシカ侵入の要因「漏電」

電気牧柵の設置後もエゾシカに侵入される大きな要因は、下草が電牧線に接触することによる漏電です。これにより、電気牧柵の効力が大きく減少します。他にも、断線や電牧線のたるみによる地面への接触が挙げられます。このような漏電を防ぐために、電気牧柵のこまめな見回りや対応が必要です。

電気牧柵の下草管理

地面に最も近い電牧線は、地上30~50cmといわれているため、下草の草高がこれに達する前に除草する必要があります。除草の方法は、①刈り取り、②除草剤の散布、③防草シートの設置が挙げられます。
今回、試験的に②除草剤の散布について、飼料用とうもろこし収穫後の秋散布を実施しましたので、その事例を紹介します。

除草剤の秋散布の事例紹介

令和4年10月14日に、釧路市音別地区内TMRセンターの飼料用とうもろこしほ場の電気牧柵下の一部にて、ラウンドアップマックスロードを散布(以下、秋散布)し、翌年に除草効果を確認しました(表1)。

表1作業内容と除草効果確認の経過

表1作業内容と除草効果確認の経過

散布は専用ノズル(ULV5)を装着した噴霧器を用いて行いました。専用ノズルを用いることで、5L/10aの少水量散布が可能となり、給水時間の削減や省力化にも繋がりました。
令和5年5月17日の経過観察では、秋散布の除草効果を確認することができました(写真1)。

写真1散布の経過(夏散布前)

写真1散布の経過(夏散布前)

5月30日には秋散布部分も含め、全ての電牧下に同剤が散布(以下、夏散布)されました。
6月26日の経過観察では、秋散布に夏散布を組み合わせたことによって、除草効果が持続していました(写真2)。

写真2散布の経過(夏散布後)

写真2散布の経過(夏散布後)

今回の結果から、秋散布による除草効果および夏散布との組み合わせによる除草効果の持続を確認することができました。また、収穫作業が一段落した秋に除草剤を散布し、翌年の春先の忙しい時期まで除草効果が続くことも大きなポイントです。

最後に

今回、電気牧柵の下草管理の一例を紹介しましたが、条件によって除草効果の違いやその他の要因による漏電の可能性もあるため、電気牧柵のこまめな見回りが必要です。
設置後も継続的に整備を行い、良質な自給飼料の確保に繋げましょう。

この情報は、地域(釧路市、白糠町、鶴居村)の農業者向けに発出した技術情報です。

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