乾乳期管理のポイント~牛の観察編~

分娩後に疾病が多く発生する場合、乾乳期の乳牛を観察し、原因を確認し、改善することが大切です。
今回は、乾乳牛を観察する際のポイントについて紹介します。

▼太り具合いの観察

分娩前に過肥の牛は、分娩後に急激な体脂肪の動員により脂肪肝などの周産期疾病にかかりやすくなります。また、分娩前にやせている牛(削痩牛)は、分娩後も栄養失調となり、乳量や繁殖の回復遅滞に繋がります。

過肥牛

後方から牛を見た際に、腰角と背骨を結ぶラインの凹みが見えない。もしくは、わずかにしか見えない牛は太りすぎています(写真1)。

写真1過肥牛は腰角と背骨を結ぶラインの凹みがわずかにしか見えない

(写真1)過肥牛は腰角と背骨を結ぶラインの凹みがわずかにしか見えない

削痩牛

後方から牛を見た際に、坐骨にある3つの頂点のうち左側なら左下、右側なら右下の頂点が目視で確認でき、触っても脂肪があまり確認できない牛はやせすぎています(写真2)。

写真2削痩牛は左下もしくは右下の頂点が目視できる

(写真2)削痩牛は左下もしくは右下の頂点が目視できる

原因と対策

過肥や削痩の原因は、給与飼料のエネルギーの過剰または不足です。しかし、乾乳期の体脂肪の増減は、内臓や胎児に影響するので、乾乳期は体脂肪を維持することが大切です。
したがって、泌乳中・後期の栄養濃度を見直し、乾乳期前までに適正な状態に調整しておきましょう。

▼採食状況の観察

乾乳後期は飼料の摂取量を高める必要があります。充分に飼料が摂取されているかは、ルーメンの充満度で判断します。
採食量が十分な牛は、左上膁部がふくれています。一方、採食量が不足している牛は、左上膁部が三角形または台形状に大きく凹んでいます(写真3)。

写真3採食量が不足している牛は左上膁部が三角形に大きく凹んでいる

(写真3)採食量が不足している牛は左上膁部が三角形に大きく凹んでいる

原因と対策

採食量が減少する原因は、粗飼料の品質、飼槽周辺の環境、水飲み場の衛生など色々と挙げられます。特に乾乳後期に重要なのは、飼養密度と牛の動きやすさです。
胎児が大きくなるにつれ、ストレスが高まり動きも制限されます。フリーストールの場合は、飼養密度を高めず、つなぎ牛舎でも1頭あたりのスペースを確保しましょう。また、牛床は滑りを解消し、飼槽や水飲み場周辺も整備しましょう。

▼観察結果を活かす

気になる牛がいた場合、分娩直前からしばらくはトラブルを起こす可能性があります。その期間も注意深く観察し、早めに獣医に相談するなど、素早い対応が必要です。
牛群全体にこのような牛が多い傾向が見られたときは、飼養環境や飼料給与の改善が必要です。これまで挙げた例を参考に改善に取り組みましょう。

▼まとめ

今回紹介した観察のポイントは、作業の合間などに注意して見て欲しい項目です。
観察は特別な道具を必要としないため、今日からでも実践してみてはいかがでしょうか。

(令和3年12月中西部支所作成)

この情報は令和4年2月に釧路中西部支所が地域の農業者に向けて発出するものです。

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